裁判所選びができなくなる?TC Heartland 事件で特許訴訟の被告側が有利に?

米国最高裁は、2017 年、TC Heartland LLC v. Kraft Foods Group Brands LLC, 137 S. Ct. 1514 (2017)において、特許訴訟の際には特別な裁判地(venue)に関するルールが適用され 、米国内企業の場合、会社の設立地が「居住」(resides)している地であると限定的な 解釈をした。

裁判地 (venue) —  実際に訴訟が行われる裁判所。米国特許訴訟の場合、裁判 地が訴訟の進展や時間、コストに大きな影響を与える。そのため原告による Forum shopping とよばれる裁判所選びが頻繁に行われている。

Forum shopping (裁判所選び) — 原告が自分に有利な裁判所を選び、訴訟を提 起すること。

通常、連邦地裁で扱われる訴訟の裁判地(venue)には一般的なルール(28 U. S. C. §1391(c))が適用される。しかし、特許訴訟の場合、裁判地を決める特別なルール(28 U.S.C. § 1400(b))が存在する。そこには、「 被告が居住 (reside) している地…の裁 判地区で訴訟を起こすことができる。」と書かれていが、今回 TC Heartland 事件で問題 になったのが、被告が居住 (reside) している地とはどこなのか?ということ。

TC Heartland 事件以前は、特許訴訟以外の一般的な裁判地に関するルール(28 U. S. C. §1391(c))の改正を理由に、特許訴訟の場合でも人的管轄(personal jurisdiction)がある 地域だったら、裁判地(venue)の条件も満たすという認識が一般的だった。

Personal jurisdiction (人的管轄) – 訴訟が行われる裁判所が満たさなければいけ ない管轄の1つ。特許訴訟の場合、通常、被告が特定の州で商品を意図的に販売 している場合、人的管轄が認められる。

つまり、TC Heartland 事件以前は、特許権者はほぼ自由に裁判所を選ぶことができる状 態だった。

しかし、TC Heartland 事件で、最高裁は、一般的な裁判地ルール(28 U. S. C. §1391(c)) の改正は、特許訴訟の裁判地ルール(28 U.S.C. § 1400(b))に影響を与えず、米国内企 業の場合、会社の設立地が「居住」(resides)している地であると限定的な解釈をし た。

この判決によって、人的管轄を理由に裁判地を決めることができなくなったので、特許権者が選べる裁判所は大きく制限された

今後は、人的管轄を理由に多くの特許訴訟が起こされている Eastern District of Texas に おける特許訴訟数が減少することと、逆に、多くの会社が設立されている Delaware 州 や California 州での特許訴訟数が増加することが予想される

注意点: この判例は米国の企業を対象にしたもので、最高裁は(日本企業を含む)外国企業に関する取り扱いは明確には示していない。また、特許の非侵害や無効を求める Declaratory judgement(宣言判決)には適用されない。

Declaratory judgement (宣言判決) – アメリカで当事者にとって法律的に不確定 な事柄の解決を求める訴訟。特許の場合、特許権者に訴えられる前、または、特 許ライセンス交渉がこじれた時などに特許を持っていない側が起こすことがあ る。

まとめ作成者:野口剛史

元記事著者:Brett M. Schuman, William M. Jay, Douglas J. Kline, Robert Frederickson, III, David L. Simson. Goodwin Procter LLP. (元記事を見る

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