知財に強い会社を作りための特許プログラムとはどうあるべきなのでしょうか?今回はこのトピックに関して、大手企業3社の社内弁護士をパネリストに招いたトークセッションのまとめから、成功する特許プログラムの構築のポイントを5つ紹介します。
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“14th Annual Corporate IP Institute “が開催した「成功する特許プログラムの構築」をテーマにしたセッションが行われました。Equifax、Landis+Gyr、Boehringer Ingelheimの社内弁護士で構成された専門家パネルによって、特許プログラムの構築や拡大のための戦略が話されました。
パネルディスカッションでのキュリロ氏の5つのポイントは以下の通りです。
1.企業のリーダーによる特許プログラムのサポートが重要
- 複数のレベル(R&D部門、執行委員会など)で特許の認知度を高める。
- 競合他社との差別化分野に関わる重要人物との関係を構築する。
- 訴訟による市場優位性の獲得などの成功事例を確実に社内で公表する。
2. 対象者と業界に応じたアプローチ
- 企業のリーダーの背景を調査し、主要なリーダーの特許への理解度と受容性を確認する。
- 特許保護の排他的な役割は、特許に精通していない聴衆や、競合他社のポートフォリオが小さい場合には、より説得力がある。
- 特許からの収入源は、直接的なもの(ライセンシングなど)と間接的なもの(パテントボックスによる税効果や審査費用の資産化)の両方があり、ポートフォリオが大きい企業や業界では、より説得力が増す。
3. ダイバーシティ・イニシアチブと従業員のエンゲージメントに対するメリット
- 特許資産を生み出す発明者の多様性は、社内での多様性の促進が成功しているかどうかの指標となりうる。
- 特定のグループ(例:研究開発の上級リーダーシップ)に独占された特許は、他のグループ(例:組織のより末端にいる従業員)の開発に投資する必要があることを示している可能性があります。
- 特許に掲載されることで、従業員は自分の努力が会社に評価されていると感じることができます。
4. インセンティブプログラム
- 特許インセンティブに関する法律や共同発明の基準が異なると、全社的なインセンティブポリシーの策定が難しくなります。
- 金銭的な報酬は、特許に不慣れな潜在的な発明者の間で興味を持たせることができます。
- エンジニアや学歴の長い科学者など、特定の発明者は、専門的な立場の証拠を向上させたいと考えている場合があります。
5. 特許プログラムの認知度向上
- 特許トレーニングプログラムを設計し、実施する際には、他の企業の必須トレーニングとの競合を考慮する。
- 技術分野や文化などによって、特許という概念に対する抵抗感のレベルが異なることを考慮する。
- 特許関連の成功を促進し、発明者を社内で認識することができる管理者やその他の影響力のある人材との関係を構築する。
解説
強い特許ポートフォリオを築き、知財がビジネスを行う上でちゃんと機能するためには、確立された特許プログラムが必要です。
しかし、この5つのポイントを見てみると、知財部として「このような形で進めていきます」というような知財部主観の方針だったり活動だけだと、成功するプログラムを作り出すのは難しようです。
そうではなく、知財に関連が強い研究開発の関係者や企業の上層部により知財を身近に感じてもらえるような取り組みを地道にやっていくことが成功する特許プログラムの重要なポイントになるのではないでしょうか?
また、トレーニングやインセンティブも開発者・発明者目線で、彼らの関心や興味があるものと関連付けて話さないといけないというところもあります。当然、発明者の熟練度や知財の理解度もまちまちなので、どこまでパーソナライズされたプログラムを提供できるかが成功のもう1つの大きな鍵なのではないでしょうか?
このように企業や業界によって「知財」に対する考え方は様々なので、1つの成功する特許プログラムの構築方法があるわけではなく、どれだけ自社の文化や従業員一人ひとりを理解して、彼らの立場から知財という大切だけれども軽視されやすい資産を啓蒙していくことが求められています。
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まとめ作成者:野口剛史
元記事著者:Robert Curylo. Kilpatrick Townsend & Stockton LLP(元記事を見る)