特許申請中に、審査官と出願人の間で議論が並行してしまう場合、出願人は PTAB への上訴をし、行政法判事(administrative law judges (ALJs))に再審議してもらおうと考えることがあります。上訴(Appeal)はときによっては特許を権利化させるために有効な手段ですが、テクノロジーセクター(TC)ごとの分布はどうなっているのでしょうか?
上訴と許可率の関係
一般的に、TCごとの上訴の比率は、TCの特許許可率(allowance rate)に関係します。特許を許可する比率が高ければ、出願人は上訴しなくてもいいので、上訴率は下がります。しかし、特許が許可されにくいTCでは、 PTAB でALJに再審議してもらおうと考える出願人が増えるので、上訴率が上がります。
統計調査
元記事を作成したKilpatrick Townsend法律事務所は、コンピューター関連のテクノロジーセクター(2100, 2400 、2600とBusiness method)にしぼり過去の案件を手作業で調べました。
その結果、obviousness (進歩性)に関わる上訴が一番多く、実に全体の91%を占めました。続いて多かったのが特許適格性(Patent eligibility)の問題で、25%。しかし、統計はここでは終わらずTCごとの分析に入ります。
ここで注目したいのが、特許適格性(Patent eligibility)の問題で上訴したケースがダントツで多かったのがBusiness methodsに関するTCからでした。数字は実に85%と他の2100, 2400 、2600などのTCが4から7%ほどなので、この数字がずば抜けていることがわかります。しかし、統計上、 PTAB において、特許適格性(Patent eligibility)の判断が覆されることは少なく、実に89%以上の審査官の特許適格性(Patent eligibility)がPTABでALJによって同意されています。
一方、2100, 2400 、2600のTCからPTABへの上訴は、obviousness (進歩性)に関わるものが大半なので、コンピューター関連のTCであっても、出願されている発明がBusiness methodに分類されるものなのか、それとも他の2100, 2400 、2600などのTCに分類されるものなのかでだいぶ出願と権利化の状況が変わってきます。
このBusiness methodと他のコンピューター関連のTCからの上訴の違いは最近になって更に広がり、最近のケースに限って見てみると、Business methodsのTCからの上訴の94%に、特許適格性(Patent eligibility)に関する内容が含まれていて、他のTCでは大きな数字の変化はありませんでした。
まとめ
特許適格性(Patent eligibility)の問題で特許の審査中に PTAB に上訴するケースが増えてきています。特に、Business methodに関する特許出願の上訴がとても多い状況です。 PTAB に上訴しても、特許適格性(Patent eligibility)が覆されることはめったにないのですが、アメリカにおけるBusiness methodに関する特許の権利化率はとても低いので、審査官が特許を認めない場合、 PTAB に上訴をするという出願戦略も納得の行く考え方の1つです。
まとめ作成者:野口剛史
元記事著者:Samuel Hayim and Kate Gaudry Ph.D. Kilpatrick Townsend & Stockton LLP (元記事を見る)