機能性に焦点を当てたソフトウェアクレームの特許適格性

米国連邦巡回控訴裁判所は、クレームされた発明が、コンピュータネットワークの領域で生じた問題を克服するために通信システムの通常の動作を変更するという機能性から、通信システムに向けられた特許クレームは、35 U.S.C. 101条の下で特許適格性があると判断しました。

Uniloc USA, Inc. v. LG Electronics USA, Inc., Case No. 19-1835 (Fed. Cir. Apr. 30, 2020) (Moore, J.).

クレームの特徴

Unilocは、コンピュータなどの一次ステーションと、ワイヤレスコンピュータマウスやキーボードなどの少なくとも1つの二次ステーションからなる通信システムに関する特許を所有しています。従来のシステムでは、一次ステーションは、(1)新しい二次ステーションを識別するための問い合わせメッセージを送信することと、(2)非アクティブであるが以前に接続された二次ステーションがトランジットする情報を持っているかどうかを決定するためのポーリングメッセージを送信することとを交互に行っていました。従来のシステムでは、二次ステーションは、一次ステーションに接続してデータを送信する際に長い遅延を経験する可能性がありました。このような課題を解決するために、今回問題となったクレームは、問い合わせメッセージにポーリング用のデータフィールドを含めることにより、これらの従来の通信システムを改善しました。この改良により、二次ステーションと一次ステーション間の応答時間を短縮することが可能になりました。

背景

Unilocは、上記のクレームを含む特許を用いて、LGを相手に特許侵害訴訟を起こしました。LGは、クレームは35 U.S.C. 101条に基づき特許不適格であると主張し、却下を求めました。連邦地裁はLGの主張に同意し、主張されたクレームは「無線通信システムにおける追加のポーリング」という抽象的なアイデアに向けられているとし、主張されたクレームを、連邦巡回控訴裁がTwo-Way Media v. Comcast Cable CommunicationsおよびDigitech Image Technologies v. Electronics for Imaging で不適格としたデータ操作のクレームに類似するものだとしました。連邦地裁はまた、特許請求の範囲には特許請求の範囲を保存するのに十分な進歩的概念が記載されていないと判断しました。この判決を不服としUnilocは控訴します。

連邦巡回控訴裁の判決

連邦巡回控訴裁の分析は、特許の特許適格性に関する最高裁のAlice/Mayoの2段階の枠組み(two-step Alice/Mayo framework)を適用し、クレームが抽象的なアイデアに向けられているかどうかに焦点を当てました。連邦巡回控訴裁は、ソフトウェアの革新に関わるケースでは、「クレームがコンピュータの能力の特定の改善に焦点を当てているか、それともコンピュータが単にツールとして使用されるだけの抽象的なアイデアを修飾するプロセスやシステムに焦点を当てているか」が重要になることが多いと指摘しています。さらに、連邦巡回控訴裁は、ソフトウェアのクレームが「コンピュータまたはネットワークプラットフォーム自体の機能性の向上を目的としたもの」であれば、ソフトウェアのクレームは適格であるとしてきたことを指摘しています。

これらの原則を適用して、連邦巡回控訴裁は、Unilocの特許クレームはコンピュータ機能の改善に向けられたものであるため、適格であると判断しました。具体的には、一次ステーションが照会メッセージの送信と二次ステーションへのポーリングを同時に行えるようにすることで、従来のシステムに存在していた遅延が軽減されることを指摘しました。したがって、特許クレームの範囲は単にデータを組み合わせたり、操作したりするだけではなく、「通信システム自体の機能性に対する特定の主張された改善に向けられたもの」であるとしました。したがって、連邦巡回控訴裁は、請求項は第101条に基づく特許適格性があると判断しました。

解説

35 U.S.C. 101条下における特許適格性の問題は2014年のAlice判決後、大きな問題になっています。OLCでもこのトピックに関する数々の記事を取り上げてきました。大きなトレンドで見てみると、ここ数年で特許適格性に関する基準が明確になりつつあります。これは、6年にも及ぶ判例データの蓄積や特許庁によるガイドラインのアップデートなどの地道な取り組みの成果がここ数年で実ってきたことが大きいと思います。

さて、今回の判決では機能性に焦点を当てたソフトウェアクレームの特許適格性が認められましたが、今後もソフトウェア関連の特許をアメリカで出願するには、このように機能性に焦点を当てた開示とクレームが重要な要点になってくるでしょう。

クレームが抽象的であるか否かという点については、個別案件の判断になるので、明確なラインを引ける訳ではありませんが、今回、連邦巡回控訴裁が指摘したように、「クレームがコンピュータの能力の特定の改善に焦点を当てているか、それともコンピュータが単にツールとして使用されるだけの抽象的なアイデアを修飾するプロセスやシステムに焦点を当てているか」が重要になるので、どれだけ明確に問題を特定し、どのような具体的に改善を行ったのかを記載する必要があるでしょう。

ソフトウェア関連の特許を多くアメリカに出願している場合、35 U.S.C. 101条下における特許適格性の対策は重要です。そのために、経験が豊かな現地代理人を選ぶことも必要ですし、日本サイドの担当者もある程度の理解が必要になってきます。35 U.S.C. 101条に関してはUSPTOのガイドラインを参考にしてもいいですが、実際の案件を見て見るのも有効です。以前OLCでも紹介したツールを使えば、どのようなクレームが無効になったのか、クレームの有効性が維持できたのかが一目でわかるようになっています。アメリカで有効なソフトウェア関連の特許を得るには、このようなツールから実際の手続きを調査して、自分なりの基準を持っておくことが大切だと思います。

まとめ作成者:野口剛史

元記事著者:Gilbert Smolenski. McDermott Will & Emery (元記事を見る

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