特許の先行例となるon-sale barのイメージは製品の販売や売り出しがきっかけになることは広く知られていますが、サービスの提供だけでもon-sale barに抵触することがあるので注意が必要です。
Quest Integrity USA, LLC v. Cokebusters USA Inc., No. 2017-2423 (Fed. Cir. May 21, 2019)において、CAFCは特許権者であるQuest がその顧客に行ったサービスがon-sale barにあたるとして、一部のクレームが無効になりました。
今回問題となったサービスは、Quest が特許出願を行う1年以上前の2003年に提供されました。このサービスではハードウェアやソフトウェアといった形のあるものは顧客に提供されず、最終レポートだけが顧客に提供されました。
そのサービスが提供されて1年以上経った2004年に、Quest は上記のサービスに関わる方法とシステムに関する特許出願を行います。
特許の権利化後、Quest は競合他社であるCokebusters を訴えますが、そこで2003年に提供されたサービスがon-sale barであることが指摘されました。その結果、地裁では一部のクレームが無効になりました。
今回の判決で、CAFCは地裁の判決を肯定し、特許出願の1年以上前に行われたサービスがon-sale barに該当すると判断しました。この判決でCAFCは、on-sale barには販売 (sale) や売り出し (offer for sale) だけではなく権利化する準備が整っている (ready for patenting) も含まれていることを強調しました。今回のサービス提供は、その時点で権利化するための情報があるにも関わらず、特許出願を1年以内に行わなかったということを示すことになったようです。
また、今回の判例では、on-sale barが方法クレームだけでなく、ハードウェアやソフトウェアに関するクレームにも適用されたので、注意が必要です。
サービス提供会社は要注意
今回の判例はサービスを提供しているSaaS提供会社に特に重要なものです。SaaSの場合、新機能を簡単に顧客に提供できますが、事前の特許出願を怠ると、たとえ顧客には見えないところで発明が使われていたとしても、サービスを提供していたという事実のみで、そのサービス自体がon-sale barになる可能性があります。
まとめ作成者:野口剛史
元記事著者:Daniel B. Weinger, William S. Perkins, Kristina R. Cary and Serge Subach. Mintz(元記事を見る)