サービスマークの登録は慎重に

主に自分の会社に利益をもたらし、他の人には利益をもたらさないサービスマークの登録を考えている場合、商標を出願するべきではないでしょう。なぜなら登録が拒否されてしまうからです。

ケース:In re California Highway Patrol, SN 88796327 (TTAB Nov. 4, 2021) [not precedential] (CHiP)

CHiPで、TTABは「MADE FOR MORE」を 「法執行機関の分野における雇用募集サービス、人材採用、雇用募集および人材派遣サービス、人材の募集および配置を含む 」サービスに対して登録することを拒否したことに対する控訴を取り扱いました。米国特許商標庁(USPTO)の審査官は、商標が商標法の意味するところのサービスを提供するために使用されていないと主張して登録を拒否。また、審査官は、この商標はCalifornia Highway Patrol(申請者)が自らの人材を募集するために使用したものであり、登録できないと主張しました。TTABはこの登録拒否を支持し、商標法第1条、第2条、第3条、第45条に基づき登録を拒否しました。

証拠として提出されたのは、申請者が出した使用見本です。

問題を分析するにあたり、TTABはまず、商標法第3条、15 U.S.C. 第1053条(一般的に、商業で使用されるサービスマークは商標と同様に登録可能であると規定している)と、第45条、15 U.S.C. 第1127条(「サービスマーク」の定義を規定している)を引用。しかし、商標法では「サービス」の定義は定められておらず、また、正確に何がサービスであるかについての立法史もなく、用語の「洗練」(refinement)はUSPTOと裁判所に委ねられています。

そして、TTABは、サービスとは何かを決定するために使用する3つの要素を提示しました:

  1. サービスは、実際の活動でなければならない。
  2. サービスは、出願人以外の者の注文に応じて、またはその者の利益のために行われなければならない。
  3. 実施される活動は、申請者の商品の販売または他のサービスの実施に関連して必然的に行われるものとは質的に異なるものでなければならない。

第1の要素については、California Highway Patrol と審査官の間で問題がなかったため、TTABは、第2および第3の要素を分析しました。

第2の要素の分析において、TTABは、「問題は、申請者が登録を求めている活動から誰が主に利益を得るかである」と述べ、サービスが主に他人の利益のために行われる場合、申請者が「付随的な利益を得ることは致命的ではない」(”incidental benefit is not fatal”)と指摘しました。。逆に、申請者がそのサービスから主に利益を得て、他の人が付随的な利益を得た場合、その商標は登録できないとしました。

TTABは、申請者が申請書に記載したサービス内容を「本質的には自分自身のためのリクルートサービス」であり、「明らかに申請者が自分自身のために、自分のランクのポジションを埋めるために行っている活動」であると見なした。

また、商標審査手続マニュアルの第1301.01(a)(ii)項も類似していると指摘し、次のように規定しています:

自社の労働者を雇用するために人事部を設置している会社は、自社の事業の遂行を容易にしているに過ぎない。その一方で、他の会社のために労働者を募集して配置することを事業としている会社は、雇用代理業務を行っている。

その結果、申請人のサービスは他人のためではなく、主に自分の利益のために行われていると判断しました。

3つ目の要因について、TTABは、申請者が自社の従業員を募集・雇用することは、申請者のサービス内容を構成する活動と大きく異なるものではないと判断しました。むしろ、そのサービスは「法執行機関やその他の企業が行う日常的な活動」であるとしました。

教訓

このCHiP事件から得られるものは、サービスマークは、自社ではなく、主に他者に利益をもたらすものであることの重要性です。そのため、自社が登録を検討しているサービスマークがあり、アメリカで権利化するような場合は、この「主に他者に利益をもたらす」ことを証明するような証拠があるかを検討することが重要になります。

参考記事:Thinking of Registering a Service Mark That Primarily Benefits Your Company? Think Again

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