クレームが自明である(obvious)という判断に反論するために、特許権者はsecondary considerationsの証拠を提示することがあります。しかし、証拠によっては自明性を解消するために提出された証拠とクレームに十分なNexus(関連)が必要になってきます。今回はFox Factory, Inc. v. SRAM, LLCという判例で、そのNexusの基準が一部明確化されたので解説していきます。
Fox Factory, Inc. v. SRAM, LLC,
CAFCは2019年12月18日、Fox Factory, Inc. v. SRAM, LLC, において、PTABの自明判決を無効にし、PTABに差し戻しました。
FoxはSRAMの自転車チェーンリングに関する特許をIPRでチャレンジしました。PTABでは自明であるという判決でしたが、CAFCはその判決を覆し、PTABが間違った基準を用いてクレームとsecondary considerationsに関する証拠の間のNexusを判断したという判決を下しました。
自明性
アメリカ特許法35 USC. § 103により、特許クレームが自明であれば、クレームは無効になります。これには一般的に文献などの先行例を合わせるとクレームされた発明が容易に見いだせるという考え方が用いられ、motivated to combineやreasonable expectation of successなどがよく議論されます。In re Warsaw Orthopedic., Inc., 832 F.3d 1327, 1333 (Fed. Cir. 2016)
Secondary considerations
この自明性を覆す方法として、Secondary considerationsに関わる証拠を提示することがあります。Secondary considerationsには様々な証拠が使われることがあり、a long felt but unsolved need in the art, the failure of others to solve the problem addressed by the invention, or the commercial success of the patented inventionなどの事柄について証拠が提出され、出願時には自明性が無かったことを示すことに用いられます。
しかし、Commercial successをSecondary considerationsとして用いる場合、単に証拠を出すだけでなく、クレームされた発明と売り上げのNexus、つまり密接な関連、を示す必要もあります。
“if the commercial success is due to an unclaimed feature of the device” or “if the feature that creates the commercial success was known in the prior art, the success is not pertinent.”
Ormco Corp. v. Align Tech., 463 F.3d 1299, 1312 (Fed. Cir. 2006).
Nexus
CAFCは、Nexusを示すにあたり、特許権者が特定の製品に関わる証拠を示し、その特定の製品は特許で開示されてクレームされた発明でなければいけないとしました。
またCAFCは、特許権者は、クレームされた特徴がよく売れた製品の一部品であることを示すだけではなく、クレームされた特徴が商品の重要な部分である(coextensive)ことを示すことが必要であるとしました。
他の特徴がinsignificantでなければいけない
Fox Factory, Inc. v. SRAMにおいて、CAFCは、対象とされた製品のチェーンリングの特徴が別の特許でも保護されていたという理由などにより、クレームされた特徴はSRAMの X-Sync chain ringsとcoextensiveではないということを示しました。
裁判所は、ほぼすべての事例に関して、完璧なcoextensivenessは存在しないということを認めつつ、発明に関連する製品はクレームされた製品でなければいけないとし、クレームされていない部分はinsignificant (重要ではない)であるべきだという見解をしめしました。
SRAMは対象とされた製品のチェーンリングの特徴に関して別の特許も持っていたので、その事実が、今回対象となった特許に書かれている特徴以外の部分はinsignificant (重要ではない)でないということを示すとして、Nexusが認められませんでした。
しかし、RemandでSRAMはsecondary considerationsの証拠はクレームされた発明によるものであると証明できれば、Nexusを証明できる可能性があります。
まとめ
Secondary considerationsは自明性を覆すのに有効な手段になる可能性があります。しかし、Commercial successを主張する場合、売り上げとクレームされた特徴の関連性Nexusが重要になってくるので、今回の判例を参考に十分なNexusが証明できるかを事前に検討することが重要になってきます。
まとめ作成者:野口剛史
元記事著者:Julie L. Spieker. McKee Voorhees & Sease PLC(元記事を見る)