Pre-AIAとPost-AIAの記述が全く同じでなかったことをきっかけに、Post-AIAでは機密販売は先行技術としてみなされないのではとAIA施行直後から言われていました、しかし、今回の判決で機密販売の基準は変わらず、Pre-AIAと同様にPost-AIAでも機密販売は先行技術とみなされることが明確になりました。
2019年1月22日、最高裁はHelsinn Healthcare S.A. v. Teva Pharmaceuticals USA, Inc. において全会一致で、機密販売は先行技術とみなされるという判決を下しました。
機密販売(secret sale)というのは、発明を秘密にすることを義務付けられている第三者に発明が含まれるものを販売したのことです。Pre-AIAの場合、このような形で販売が行われても、販売自体が特許性を判断する上で先行技術とみなされるとされていました。Pfaff v. Wells Electronics, Inc., 525 U.S. 55, 67 (1998)。
しかし、AIAによる特許法の法改正があった際に、特許法102に記載されている販売に関わる文言がまったく同じではなかったため、AIAによりそれまでは通例とされていた機密販売を先行技術として扱うことに疑問を唱える意見も出てきました。
今回はその不透明だった部分に最高裁が判決を下したことになります。最高裁は、Pre-AIA時代に機密販売を先行技術と認めたPfaff v. Wells Electronics, Inc., 525 U.S. 55, 67 (1998) を引用し、また、Pre-AIA時代にCAFCでは一貫して機密販売を先行技術として扱ってきたことから、議会はAIAにおいて機密販売に関する事柄は何も変えなかったと結論づけました。
また、Post-AIAで追加された”or otherwise available to the public”という文言だけで、議会が「販売」の意味を変えたとは言い難いとしました。
判決の影響
それではこの判決が今後及ぼしうる影響を考えてみましょう。今回の判決では、機密販売でも特許性を判断する上で先行技術とみなされるというものです。つまり、NDAなどで機密義務を課した相手に対してであっても、販売した場合、その販売によって特許が出願できなくなってしまうという事態が想定されます。
しかし、このような問題は仮出願で回避できます。発明が含まれる商品を販売する前に仮出願しておけば、優先権を主張でき、販売が先行技術としてみなされることを未然に防ぐことができます。
まとめ
今回の最高裁の判決は予想どおりというところです。AIAにおいても機密販売が先行技術とみなされることがはっきりしたので、機密販売前に事前に仮出願を行っておく必要があります。
まとめ作成者:野口剛史
元記事著者: Gene Quinn. IPWatchdog.com (元記事を見る)