最高裁における審議が決定:譲受人禁反言の将来は?

譲渡者禁反言(assignor estoppel)について最高裁が審議することになりました。譲渡者禁反言は、裁判所が作ったルールですが、司法機関である地裁と行政機関であるPTABで譲渡者禁反言の扱いが異なるということが起き、矛盾が生じていました。今回、譲渡者禁反言の撤廃も含めて、最高裁がこの矛盾をどう解決するかに注目が集まっています。


最高裁は、2021 年 1 月 8 日、Minerva Surgical, Inc.が 2020 年 9 月 30 日に提出したwrit of certiorariを許可しました。 提起された問題は、「特許を譲渡した、または特許の譲渡人と利害関係者にある特許侵害訴訟の被告が、無効性の抗弁を法廷で審理することができるかどうか」というものです。譲渡者禁反言の教義(doctrine of assignor estoppel)は、特許を他の者に譲渡した当事者(または他の利害関係者)が、後に地方裁判所で譲渡された特許の有効性に異議を唱えることを防ぐための衡平法の教義(equitable doctrine)です。Minerva は、最終的に Hologic が所有する 2 つの特許の有効性に異議を唱えることを目的に、この教義の廃止を求めています。

Hologic社が主張しているHologic社の特許の発明者は、以前に会社を売却して特許権を譲渡したMinerva社の創業者兼社長であり、最終的にはHologic社が取得したものです。 連邦地裁でMinervaは、主張された特許は無効であると主張し、主張された特許の有効性に異議を唱えるために、並行して当事者間審査の申し立てを行いました 。PTABは、主張された特許のうちの1件について審査を認め、異議を唱えられたクレームを特許不可能とする最終的な書面による決定を下しました 。しかし、2つ目の特許に関してはIPRが開始されませんでした。

Hologic社は、譲受人禁反言の原則に基づき、Minerva社が地方裁判所で主張された特許の有効性に異議を申し立てることはできないとの略式判決を求めました。裁判所は略式判決を下し、Minervaは連邦地裁での訴訟で主張された特許の有効性に異議を唱えることはできないとしました。裁判所はまた、特許の主張された請求項の侵害についても略式判決を下しました。この訴訟は故意侵害の問題で審理され、陪審員はHologicに損害賠償を与えました。この訴訟は、両当事者によって連邦巡回区に上告されました。

2つの主張された特許は、異なる譲受人禁反言の問題を提起しました。連邦巡回控訴裁は、主張した特許のうちの 1 つ(すなわち、IPRの申立てが認められた特許)について、IPR 手続において、譲受人が主張した特許請求項を無効とする PTAB の最終決定書に依拠することを譲受人が禁止するものではないとした連邦地裁の判断に誤りがあったかどうかを検討しました。連邦巡回控訴裁は、同法の明確な文言である 35 U.S.C.第311条(a)は曖昧性がなく、「もはや特許の所有者ではない譲受人は、その特許についてIPRの申立を行うことができる」と結論付け、Arista Networksの判決と一致しているとしました。

連邦巡回控訴裁は、第二の特許(すなわち、IPRが却下された特許)については、譲渡人の禁反言は譲渡人が譲渡された第二の特許の無効性を連邦地裁で争うことを禁じるものであるとする連邦地裁の略式判決命令を再検討しました。連邦巡回控訴裁は、譲受人禁反言の教義により、Minerva社が地方裁判所で主張した特許の有効性に異議を申し立てることができないとする連邦地裁の判断を支持しました。

Minerva社は、申立書の中で、「譲受人禁反言は、地方裁判所の訴訟では、当事者間審査での審査よりも重要な役割を果たしていない」と主張。特許法の条文に反するだけでなく、特許法の重要な公共目的を損なうものである」と主張ました。Minerva はさらに、譲受人禁反言は「特許の欠陥を暴露したり、譲受人が正当な範囲を超えて特許を主張した方法を強調したりするのに十分な立場にある個人、すなわち発明者を特定し、その有効性に挑戦することを禁じるものである」と主張し、最高裁に「譲受人禁反言は無効であると宣言するよう」求めました。

現在、地方裁判所では、譲受人の禁反言という司法で作られた教義が無効の抗弁となっていますが、譲受人の禁反言は、侵害者がIPR手続において主張された特許の有効性に異議を申し立てることを妨げるものではなく、譲受人が譲受人の特許の有効性に異議を申し立てることを事実上可能にしているPTABの規則の抜け穴が明らかになっています。この矛盾は、Stoll判事の追加見解でも取り上げられており、「当裁判所の判例がこの事件で生み出した特殊な状況を強調し、疑問を呈している」とし、「譲受人の禁反言という判例的な教義は、当事者間のレビューの文脈では適用されない」としています。Stoll判事は、「このように、本判例は、譲受人が特許庁で特許請求項の有効性を攻撃することで、譲受人が譲受人禁反言の教義を回避できるが、地方裁判所では同じことができないという奇妙な状況を提示している」と書いてます。

この訴訟がどのような結果をもたらすか、また、地方裁判所の手続きにおける長年の譲受人禁反言の教義が存続するかどうかは不明です。最高裁は今後数ヶ月のうちに口頭弁論を聴き、6月末までに判決を出すと予想されています。

解説

譲渡者禁反言の教義(doctrine of assignor estoppel)は、特許の譲渡者が後に「実は過去に譲渡した特許は無効だ」という主張をさせないために裁判所で作られたルールです。しかし、今回のケースにおいて、司法機関である地裁では譲渡者禁反言の教義が適用されましたが、行政機関であるPTABでは譲渡者禁反言の教義が適用されないという問題が発生しました。

地裁でもPTABでも「特許の有効性」が問題になっていたのにも関わらず、争う場所によって譲渡者禁反言が使えたり・使えなかったりするのはおかしいということで、今回の最高裁で審議される運びになったのだと思われます。譲渡者禁反言は裁判所で作られたルールなので、最高裁の判決次第では、譲渡者禁反言が今後なくなる可能性も十分考えられます。

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まとめ作成者:野口剛史

元記事著者:April Abele Isaacson and Kimberlynn B. Davis. Kilpatrick Townsend & Stockton LLP(元記事を見る

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