特許は企業にとって大切な資産ですが、権利化までのコストは高額で、海外への出願も検討する場合、翻訳費用などの費用もかかります。今回は、そのような特許権利化までのコストを抑えるための6つのポイントを教えます。
1. 特許マネージメントの異なる段階を学ぶ
特許出願は始まりに過ぎず、拒絶対応や発行費、維持費など特許のライフサイクルにおいて様々な異なるタイミングで費用が発生します。
効果的な特許マネジメント戦略を行うには、このような異なる段階をよく理解し、国ごとに異なるコストを考慮しつつ、予算を立てていくことが大切です。例えば、アメリカでは、出願にかかるコストは特許マネージメントのコストの10%程度ですが、日本やヨーロッパでは約3分の1にもなる場合があります。また、思いのよらないようなコストも発生する場合があります。例えば、UAEなどの国ではLegalizationが必要でそのコストは高額です。
2. 市場分析
幅広い特許保護は理想的ですが、出願する国によっては、出願費用に見合うだけの特許による保護を得られないような地域もあります。そのため、特許による保護を考えている国における市場分析が好ましいです。例えば、製法特許の出願をある国で検討していたとします。しかしマーケットリサーチの結果、製法特許の対象になる市場があまり大きくないのであれば、その製造特許の出願をその国で行うことを見送るところで費用の節減につながります。
また、特許法も国ごとに大きく異なります。そのため、同じ出願でも得られる特許保護が異なる可能性があります。例えば、インドではbiopharmaceuticalの分野での特許保護は限定的なものになっています。また、USでは薬の特許に関する予測可能性に関して懸念が向けられています。
3. 翻訳費用を抑える
特許の翻訳は特殊技能が必要なのでお金がかかります。特に、日本語、中国語、ロシア語などに翻訳する場合、出願費用の80%にも及ぶ可能性があります。このような翻訳費用も出願の有無にかかわる問題です。そのため、英語やスペイン語など共用語として広く用いられている言語での出願が最もコストエフェクティブです。
4. 最も重要なクレームのみ出願する
出願費用はクレームの数によって大きく変わります。例えば、あまりに多くのクレームがある特許を出願すると、基本費用を大きく超える金額になる場合があります。USPTOのbasic filing fee for utility patent applicationsは$300ですが、それには3つの独立クレームと合計20クレームしか含まれていません。しかし、追加の独立クレームには各$460の追加費用、20クレーム以上のクレームには各クレームごと$100に追加費用がかかります。
発明が複雑になるにつれ、出願のコストも上昇傾向にあります。しかし、その中でも重要なクレームを厳選し、クレームの数を限定していくことが大切です。
5. 国際条約を利用しコストを抑える
複数の国で出願を検討しているのであれば、コストを抑えるために様々な国際条約における仕組みを利用できるかもしれません。PCTは多くの国における特許出願プロセスを簡略化するだけでなく、コスト削減の機能も備えています。例えば、PCTは出願から特定の国を選ぶまで最低でも18ヶ月の猶予があるので、その間にマーケットリサーチ等をすて出願国を選定することができます。PCTには追加の費用がかかりますが、このように時間的な猶予が与えられるので、長期的に費用を分散することもできます。
また、Patent Prosecution Highway (PPH) agreementsも有効かもしれません。もしPPHに参加している特許庁で権利化出来ていれば、その他のPPH加盟特許庁における早期審査(fast-track examination)をリクエストとできます。この早期審査は費用を支払わずに行うこともできるので、通常の出願・権利化活動よりも費用をかけずに権利化できる可能性があります。
6. 特許出願を放棄することを恐れない
出願まで多くの費用をかけたにも関わらず、特許出願を放棄するには勇気がいります。しかし、時間と共に、出願したすべての案件が自社の事業戦略に関連するとも限りません。戦略に合わない技術に関する特許保護はリソースを消費し、より必要としている発明の知財保護が滞ってしまう可能性があります。
また、特許が権利化された後でも、支払わなければいけない維持費に対してそれ以上の見返りがあるのかを分析する必要があります。
まとめ作成者:野口剛史
元記事著者:Dennemeyer & Associates SA (元記事を見る)