ロシアでマクドナルドや有名ブランドのパクリ商標が出願されている

ロシアでは前例のない形で知財が取り扱われていますが、特許につぎ、商標も「紙切れ」になる危険性を帯びています。マクドナルドを始めとする有名ブランドの「パクリ」商標が数々出願され、商標の権利行使も絶望的な中、非友好国の企業が保有しているロシア国内の商標の価値が問われています。

マクドナルドが商標スクワッターの標的になる

マクドナルドは、30年以上にわたってロシアで最も愛され、象徴的な欧米ブランドの一つとなっていました。旧ソ連邦に最初に進出した米国企業の一つとして、ロシア人の間では特別な存在となっているようです。そのため、レストランの外には長蛇の列ができることもしばしばあったようです。

フランチャイジーが運営する約100店舗は営業を続けているようですが、ウクライナ紛争を受け、マクドナルドは850ある店舗のほとんどを一時閉店しました。

この動きとロシアによる非友好国企業が保有するロシア内の知財の弱体化に目をつけたのか、マクドナルドのロゴに 「ワーニャ伯父さん」の名前をつけた商標申請が行われました。ロゴの類似点はシンプルかつ露骨で、象徴的な金のアーチを横向きにし、左側に金の棒を走らせてキリル文字の “B” に見立てたものです。英語では “V “に相当するものです。

どうやら、ロシア下院は以前、マクドナルドの全店舗を「ワーニャ伯父さん」ブランドに置き換えることを示唆したことがあるらしく、その一環として商標出願が行われたようにおもわれました。しかし、よく見ると、この出願は商標スクワッター(trademark squatter)によってなされた可能性が高いそうです。

商標スクワッターは、国会議員が「マクドナルドをワーニャ伯父さんにする」と話しているのを見て、「いいこと思いついたぞ。これを商標出願して、誰かに売ろう」と思ったのかもしれません。

商標の保護がなければ、ロシアは閉鎖されたマクドナルドを引き取り、地元の経営者にレストランを運営させることができます。今の情勢では、マクドナルドがロシアに何らかの規制や取り締まりを求めることも難しいので、ロシアがマクドナルドをもう少しロシア的なものに変えるのはそんなに難しいことではないのかもしれません。

話を少し戻して、今回の「ワーニャ伯父さん」の商標出願をロシアの商標庁が認めるかどうか、興味深いところです。ウクライナ戦争以前は、ロシア商標庁が他のブランド、それも欧米企業のブランドに近すぎる商標を拒否することはよくあることでした。しかし、現在ロシアでは通常考えられない知財の取り扱いがなされている状態なので、今回の申請がどのように扱われるのかこれから注視する必要があるでしょう。

もし「ワーニャ伯父さん」の商標が許可されたり、ロシアにあるマクドナルドのお店が「乗っ取られる」と、マクドナルドによるロシアへの投資に深刻なダメージを受ける危険性があります。そして、マクドナルドはロシアの店舗をいつ再開するかは、現時点では発表してはおらず、そらができるかも不明です。

マクドナルド以外にもパクリ商標の被害が拡大中

以下のような大手ブランドのパクリ商標の出願も行われています:

– IDEA Furniture Factory(IKEAのロゴ入り)

– Rustagram (インスタのパクリ)

– Instarus (インスタのパクリ)

– Starbucks

これらの出願と、英国の企業による商標権の権利行使を却下したPeppa Pigの判決とを関連付けると、ロシアの裁判所で商標権を行使する能力が急速に失われる可能性があることが明らかです。

また、ロシアの弁護士は、欧米の利害関係者に同調しているように見えることを避けたいと思うかもしれないので、裁判所が(非友好国の)商標権者に不利になるばかりでなく、企業は自社を代理してくれる弁護士さえも見つけられない可能性があります。

参考記事:Trademark and Patent Rights are Under Threat in Russia

ニュースレター、会員制コミュニティ

最新のアメリカ知財情報が詰まったニュースレターはこちら。

最新の判例からアメリカ知財のトレンドまで現役アメリカ特許弁護士が現地からお届け(無料)

日米を中心とした知財プロフェッショナルのためのオンラインコミュニティーを運営しています。アメリカの知財最新情報やトレンドはもちろん、現地で日々実務に携わる弁護士やパテントエージェントの生の声が聞け、気軽にコミュニケーションが取れる会員制コミュニティです。

会員制知財コミュニティの詳細はこちらから。

お問い合わせはメール(koji.noguchi@openlegalcommunity.com)でもうかがいます。

OLCとは?

OLCは、「アメリカ知財をもっと身近なものにしよう」という思いで作られた日本人のためのアメリカ知財情報提供サイトです。より詳しく>>

追加記事

hand-shaking-settlement
契約
野口 剛史

特許・技術ライセンスにおける6つの重要なポイント

特許・技術の有効活用の一環としてライセンスは有効的な手段ですが、契約書がうまく書かれていないと、大きなリスクになる可能性があります。特に曖昧さがあったり一貫性にかけていたり、定義が曖昧である場合などは長期的に見て不安材料になってしまうので、特にアメリカの組織とのライセンスを行う場合は経験豊かな弁護士さんと十分協議した上で、ライセンスを行うことが大事になってきます。

Read More »
AI
野口 剛史

AIが生成したコンテンツの事実確認はマスト:訴訟に学ぶAIコンテンツを取り扱う上での3つの注意点

生成AIに関する取り扱いの注意は様々なところで語られていますが、特にAIが事実を取り違えたコンテンツに対する責任については気をつけましょう。最近のOpenAIに対する訴訟は、特に誤った内容を生成した場合の、生成型AIの使用に関する潜在的な法的リスクを浮き彫りにしています。今回の事件では改めて生成AIによって作成されたコンテンツの事実確認は重要であり、さらには会社としての生成AIに関するポリシーはリスク管理をする上で避けて通れないもので、教師データやプロンプトなど「入力」データにも配慮が必要なことを示唆しています。

Read More »
商標
野口 剛史

特許出願でデザインの機能性が証明されてしまう

トレードドレスは機能的であってはいけません。当然、出願人はデザインの非機能性を主張しますが、同じデザインに対する特許出願からデザインの機能性が示されてしまうことがあります。1つの製品を特許やトレードドレスなど複数の知財で守る場合、準備の段階で明確な保護の棲み分けをおこない、お互いが干渉しないような形で出願する必要があります。

Read More »