USPTO では、Access to Relevant Prior Art Initiative (“RPA Initiative”) という特許出願の審査に必要な先行例文献などの情報を自動的に審査官に提供する仕組みを11月1日から試験的に一部のArt Unitsで導入します。この取り組みにより、continuing application に対する特許出願人の一部IDS義務が緩和されます。
RPA Initiative はうまく機能すれば、今後も多くの Art Units で採用されることが期待されます。アメリカ出願時のIDS提出義務は特許の有効性にも関わる重要な問題なので、この RPA Initiative の概要を詳しく見ていきます。
今回は RPA Initiative の Phase one にあたり、親出願をもとにする continuing application (Continuation, divisional, CIPなど)の一部に試験的に適用されます。具体的には、親出願に対する先行例文献が continuing application の審査に自動的に持ち込まれます。
この自動化により、親出願に対する先行例文献に関しては、continuing application のIDS で提出する必要はなくなります。このことにより、continuing application に対する出願人の IDS 提出義務は、親出願に関して提出されたものによって、満たされることになります。
さて、この RPA Initiative の Phase one の試みは、11月1日から一部の continuing application に適用されます。開始時点では適用される案件は少なそうですが、来年の1月から適用案件の拡大が予定されています。
現時点では、出願人が RPA Initiative の Phase one への参加を申し込むことはできず、特許庁が RPA Initiative の Phase one の対象になる出願案件を選びます。出願案件が選ばれた場合、出願人には特許庁からその知らせがあるとのことです。
また、RPA Initiative の Phase one 対象になり、先行例文献などの情報が親出願から自動的に持ち込まれても、持ち込みは continuing application の審査が開始された時点での情報に限られるので、例えば、その後に、親出願に対して新たな先行例文献を提出する場合、同じ文献を continuing application にも提出する必要があります。
審査に必要な情報を自動的に審査官に提供し、審査の精度と効率化を目指す RPA Initiative ですが、この仕組みの導入により出願人のIDS提出義務が軽減されるのはうれしいことです。今後も多くの案件に適用されていくことが期待されます。
アメリカ特有のIDS義務に対して気をつけていることはありますか?
まとめ作成者:野口剛史
元記事著者: Stephanie M. Sanders and Roger Wylie. Kilpatrick Townsend & Stockton LLP (元記事を見る)