生命科学の発明を特許出願する前に公開してもいいのか?

生命科学の分野では特に、なるべく早く発明を発表し、発見を公開する傾向があります。これは科学のアカデミアの意識、つまり、一番最初に発表する重要さから行われている行為だと思います。しかし、学術的に一番いい方法が必ずしもビジネスにおいて最適だとは限りません。ほとんどの国では、特許出願の前に発明を公開してしまうと、特許が取得できなくなってしまいます。つまり、アカデミアの意識のままの発明者がいると、雇っている会社にとって大きな打撃になってしまう可能性がります。

なんで特許保護がそんなに重要なのか?

特許で発明が保護されていないと、誰でもその発明を模倣することができます。模倣を許してしまうと、他社は独自の開発をしないでも、同じ発明を使うことができます。また、投資家は、投資をする判断基準として、その会社が競合他社が似た製品やサービスを提供できないようにする特許を持っているかも考慮します。このような理由から、公開する前に特許出願をするという作業は大切なことになってきます。

この例外はアメリカです。アメリカでは、公開後、一年以内だったら特許を出願できますが、この例外に頼るのはあまり良くありません。まず1つ目に、この例外はアメリカのみでしか適用されないということ。また、出願前に公開してしまうと、競合他社にそれだけ早く知られてしまい、彼らの開発を早め、最悪の場合、似たような改良技術に関して競合他社に特許出願されてしまうかもしれません。

この早期公開の問題は、何もアカデミックな発明者だけの問題ではありません。特許等の知財を軽んじて、出願等が完了していない発明を開示してしまう重役や営業などもいます。公開は、公の場で不特定多数に行う場合のみではなく、少数の人に開示した場合でも「公開」と考慮される場合があるので、注意が必要です。

顧客にアピールしないと売れないというのは最もですが、公開を急ぐ場合、公開する前に、仮出願をする形で対応することができます。仮出願は、明細書作成に時間がかかる本出願に比べ、簡単に作成でき、ほとんどの場合一日もかからずに手続きをすることができます。資料作成も簡単で、基本的にスライド、発明に関わる資料、公開予定の情報をまとめるだけでも十分です。

また、他社に開示する場合、秘密保持契約を前もって結ぶのも効果的です。というのも、開示が秘密保持契約の元に行われていなければ、ほとんどの国で公開された情報として扱われなくなるからです。

ベストプラクティス

一番いい方法は、公開するのを待ち、発明とその発明の改良を考慮し、最初に特許出願を行うことです。もし早期に公開しなければ行けない場合、公開前に仮出願をしましょう。また、他社と協議することが必要な場合は、秘密保持契約を開示する前に結び、その契約の範囲でコミュニケーションを取りましょう。

まとめ作成者:野口剛史

元記事著者:Gerson S. Panitch and Paula E. Miller. Finnegan, Henderson, Farabow, Garrett & Dunner LLP(元記事を見る

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