2019年10月1日~2020年6月30日のポストグラントチャレンジのInstitution率は、前年度の63%に対し、56%となっています(Institutionされたもの478件、却下されたもの376件)。特許庁は10月から年度が始まり、今年度の統計データは第三期まで出ていますが、今後Institution率がどう変わっていくかは注視していきたいポイントです。
2020年度7月までに、990件のIPR請願、52件のPGR請願、11件のCBM請願が提出されています。このペースでは、2019年度の1394件、2018年度の1521件に対し、2020年度には1320件のIPR申請が予想されています。現在のペースは、2017年度に提出された1812件のIPRから27%の減少を示しています。6月のIPR申請(152件)は、今年度にの中で最も高かった数値です。
2020年6月までのPTABの統計はこちらから、アーカイブされた統計を含むそれ以前の月のPTABの統計はこちらからアクセスできます。
解説
USPTOの年度は10月始まりなので、6月末の時点で四半期の75%が終了したことになります。この前に話した10月からのPTAB訴訟(IPR、PRGなど)の値上がりも来年度の始まりに適用されるものです。
IPRは引き続き特許訴訟において重要な手続きの1つになってますが、2017年に比べると特許訴訟の件数も減少傾向にあるので、それに連動してIPRの数も減少していると思われます。また、IPRを複数出すテクニックも一時期流行りましたが、最近では複数のIPRに関するルールが強化されメリットが得づらくなっています。
このような動向から、IPRを含めたPost grant challenge(別名PTAB訴訟やAIA訴訟とも呼ばれる)の数字が出ているのだと思います。
しかし、コロナ禍で特許訴訟やPost grant challengeの流れが変わる可能性も否定できません。訴訟は大きな経済イベントの1年から2年後からに変化するようです。例えば、リーマン・ショック後に企業機密訴訟が増加しましたが、その増加はリーマン・ショックが起こった2008年ではなく2010年ごろから顕著に見え始めました。
特許訴訟も2013年に近年のピークを迎えているので、Post grant challengeの減少がこのまま続くという見方よりも、ある時期に落ち着き、そこから増加していくようなイメージをもっていた方がいいと思います。
特許も含めて訴訟はその時々に合わせて上下していきます。特許の場合、今がプロパテントの時代なのか、アンチパテントの時代なのかでも大きく変わってきます。
このような大きな流れの中で、アメリカの訴訟数やPost grant challengeの数とその傾向を把握しておくべきでしょう。
TLCにおける議論
この話題は会員制コミュニティのTLCでまず最初に取り上げました。TLC内では現地プロフェッショナルのコメントなども見れてより多面的に内容が理解できます。また、TLCではOLCよりも多くの情報を取り上げています。
TLCはアメリカの知財最新情報やトレンドはもちろん、現地で日々実務に携わる弁護士やパテントエージェントの生の声が聞け、気軽にコミュニケーションが取れる今までにない新しい会員制コミュニティです。
現在第二期メンバー募集の準備中です。詳細は以下の特設サイトに書かれているので、よかったら一度見てみて下さい。
まとめ作成者:野口剛史
元記事著者:Matthew W. Johnson. Jones Day(元記事を見る)