USPTOはPTABによるIPR、post-grant review、CBM手続きに関するルール改正を発表しました。今回の改正で大きなポイントは、クレーム解釈におけるPhilips Constructionの採用です。改正ルールの適用は2018年11月13日から。
IPRに関わる大きなルール変更です。ルール変更以降、新規のIPRの手続きに関わる当事者はこのPhilips Constructionの採用がどう手続きに影響するのかを吟味する必要があります。また現在、特許訴訟の被告人で、IPRを検討している場合、新旧ルールを比較し、現状の方が有利と判断した場合、ルール変更前にIPRを申請する必要があります。
このルール変更により、PTABにおける再審査にも地裁やITCと同じPhilips Constructionが採用されます。今までは、PTABではBRI基準(broadest reasonable interpretation)、地裁ではPhilips constructionという異なった基準でクレームが解釈されていました。そのため、PTABのIPR手続きによって特許を無効化する際はより広い解釈が使え(つまり、先行文献等で特許を無効にするのに有利な基準)、地裁で侵害の判断を行う場合、特許クレームを狭く解釈するPhilips constructionを用いて、侵害を回避できるという、ダブルスタンダードで主張ができました。
しかし、11月13日以降は同じ基準が採用されるので、PTABと地裁で異なった主張をすることはできなくなります。より詳しく言うと、Philips Constructionは11月13日以降に申し立てがあるIPR、post-grant review、CBM手続きに適用されるので、既存の手続きには引き続きBRI基準が採用されます。
このクレーム解釈の標準化に伴い、PTABは地裁やITCによるクレーム解釈を考慮することができます。地裁やITCのクレーム解釈をPTABが用いる義務はありませんが、同じ基準で解釈が行われるので、地裁やITCでのクレーム解釈がPTABにおけるIPRなどの手続きに採用される可能性が高いです。
そうなってくるとIPRの手続きを開始するタイミングに影響してくるので、特許訴訟の被告人で、IPRを検討する場合、PTABか地裁のどちらでクレーム解釈をしてもらう方が有利かを早期に考える必要があります。
PTABのPhilips Construction採用が決まり今後の地裁における特許訴訟とPTABにおけるIPR手続きの関連性が高まってくると予想されます。クレーム解釈もどちらかで行われたものをもう一方が採用することも増えてくると予想されるので、訴訟中にIPR手続きを開始するタイミングはより戦略的なものになってくると思われます。
今回のニュースは、OLCウェビナー講師のAamir Kazi弁護士から情報提供してもらいました。
この PTABのPhilips Construction採用はいいことなのでしょうか?
まとめ作成者:野口剛史
元記事著者: Jason A. Engel and Elizabeth J. Weiskopf. K&L Gates (元記事を見る)