PTABが原告に代わって参加当事者が修正に反対することを認める

IPRが頻繁に活用されていく中、当初の想定を超えた問題が起こるようにもなりました。今回の判例は、複数の申立人がいて競合関係だった場合、一方だけに都合が悪いクレーム補正がされそうになった状況で、一部の申立人の異議は認められるのかという問題に言及しています。

昨年3月のZTE USA Inc. & LG Electronics Inc. v. Cywee Group LTD. (IPR2019-00143)に関わる判決です。このIPRでは、原申立人(original petitioner)は、第2の申立人(second petitioner)によってInstituteされた時に参加されました。よくあることですが、参加した申立人は競争相手でした。(最初の申立人と特許権者との間で和解が成立していない場合、参加した申立人は、AIA裁判手続において代役としての役割を果たします。)

ZTEの原出願人は和解することはせず、特許所有者の補正請求項に異議を申し立てることも、口頭弁論を要求することもしませんでした。そして、原申立人が少なくとも手続きに参加していたことを考慮し、PTABは、第2の申立人が特許所有者の補正請求項に異議を唱えることを拒否しました。

しかし、2020年7月17日の判決で、PTABは当初の決定を再考し、Hunting Titanを受けて、第2の申立人の修正請求項への異議申し立てを認めるという以前の決定を覆しました。

これは意見が分かれた再審判決で、多数派は、原申立人の異議申立中止の決定について、次のように説明しています。

IPRは、もはや意味のある敵対的なもの(meaningfully adversarial)ではないように見える。審査会の前例意見パネル(Precedential Opinion Panel。POP)による新たな決定では、POPは、特許庁の方針として、提案された補正請求項の特許性を評価する際に、異議申立プロセスの重要性を強調している。Hunting Titan, Inc. v. DynaEnergetics Europe GmbH, IPR2018-00600, Paper 67, at 11 (PTAB July 6, 2020)を参照のこと。PTABによれば、当事者による敵対的ブリーフィングは、AIA裁判における補正プロセスの基本的な枠組みを提供している。すなわち、特許権者が最初に代用請求項を申立書に提案し、申立人は証拠や主張に基づいて異議申立書で非特許性の根拠を主張する機会を持つ。このような敵対的なプロセスを利用して審査会のために問題を明確化することは、適切な証拠を特定し、希望する結果を得るために最善の議論を行うよう当事者に動機付けを与えることになる。

Hunting Titanは、申立人が補正申立に反対しないことを選択した場合など、このような状況下では、異議申立制度が、提案された代替請求項の非特許性についての潜在的な主張を審査会に提供できない場合があることを特定した。このような稀な状況において、POPは、審査会は、申立人が提出しなかった非特許性の根拠を提起することができるとしている。このように、Hunting Titanでの判決は、システムに明らかな欠陥がある場合には、特許庁が介入することを可能にしている。

本日の決定の結果にかかわらず、最終決定書は、[特許所有者の]代用補正請求項の特許性を評価しなければならない。. . . 我々は、最終決定書において、この特許性または他の特許性の問題を自発的に提起することができたが、申立人がこのような問題を提起することを許可した方が、審理制度はより良いものとなる。

Hunting Titanがここでの結果を決定づけました。原申立人が参加しなくなった場合、補正された請求項の審査は理事会に委ねられます。

解説

この問題を正しく理解するには補足が必要なので、説明します。

まず、IPRは申立人が特許を無効にできる再審査の仕組みです。当然、申立人がわざわざリソースをつぎ込んで第三者の特許をつぶしに来ているわけですから、必然的に申立人と特許権者の間は敵対的なもの(adversarial)になります。そのため、特許権者がクレーム補正を求める時でも、申立人は異議を唱え、なるべく権利範囲を小さくする、または、侵害リスクを回避できるような主張をおこなうことになります。

しかし、この敵対的な関係がJoinderによる第二の申立人の登場により変わる場合があり、今回はそのようなケースだったようです。

このケースでは、ZTEが原申立人で、LGが第二の申立人です。彼らは競合関係にあります。

クレームを詳しくは見ていないですが、IPRにおける特許権者のクレーム補正案がZTEの事業には関係なく、LGの事業には深刻な問題を与える可能性があったらどうでしょうか?

このような状況になってしまうと、原申立人(ZTE)と特許権者の間で敵対的な性質はなくなってしまいます。そのため、第二の申立人であるLGが特許所有者の補正請求項に異議を唱えましたが、覆される前のPTABの判決ではZTEは和解していなかったので、PTABはLGが異議を唱えることを拒否しました。

このような状況では、今後競合他社がIPRで共同申立人になったときに、IPRの大原則である申立人と特許権者の敵対性が失われ、一部の申立人と特許権者が協力して、他方の申立人を「ハメる」ということも起こりかねません。

そこで、今回の判決では、上記の判決を覆し、敵対的な関係が損なわれた時には特許庁が介入でき、その一環として、第二の申立人の修正請求項への異議申し立てを認めるという判断をしました。

IPRはアメリカの特許訴訟において重要な役割を果たしています。IPRの人気が高まり、頻繁に活用される中、当初考えられていた想定を超える「裏技」的な使い方もされるようになりました。

今後も新たな手法が生み出されると思うので、アメリカで特許訴訟対策を取りたいという方は、IPRの判例も注意深くフォローしていく必要があるでしょう。

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まとめ作成者:野口剛史

元記事著者:Scott A. McKeown. Ropes & Gray LLP(元記事を見る

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