今後は会社単体で商品開発が難しくなってきて、様々な企業と協力しながら、より付加価値の高い製品やサービスを開発するようになってきます。このような共同作業は歓迎するべきですが、アメリカ特許に限っては共有することは必ずしも良いことではありません。
アメリカにおける特許の共同所有とその問題点
特許の共同所有は、所有者の権利を複雑にします。35 USC 262によれば、「特許の共同所有者の各々は、他の共同所有者の同意なしに、また他の共同所有者に見返りを与えることなく、米国内で特許発明を製造、使用、販売の申し出、または販売し、または特許発明を米国内に輸入することができる」とされています。
これは、共同所有者のそれぞれが特許を使用したり、ライセンスしたりすることができ、他の共同所有者に依頼する必要もなく、その収益を他の共同所有者と共有する必要もないということを意味します。
この法律においては、各々が持つ所有権の割合は関係ないということになります。
共同所有の第二の問題は、特許を取得し維持するための費用を分割することです。共同所有者の一人以上が費用を負担したくない場合、残りの共同所有者が負担しなければなりません。全員が公平な取り分を支払ったとしても、戦略についての意見の相違は、所有者間で解決する必要があります。
最後に、特許権を行使する際には、連邦巡回控訴裁判所は、共同所有者全員が訴訟に参加することを要求しています。さらに、連邦巡回控訴裁判所は、一人の所有者が他の共同所有者に訴訟への参加を強制することはできないとしています。
解決方法
特許の共有所有権の問題には、少なくとも2つの解決策があります。第一の解決策は、有限会社のような法人を設立して、特許権のすべてを保有することによって、共有所有権を排除することです。これにより、共同所有権の問題は、事業体の運営契約によってすべて解決することができます。
第二の解決策は、共同所有者が特許の費用と利益を共有するという契約を締結することです。これは、交渉による合意によって共同所有の問題を解決するものです。
このような契約に含まれる主な条項は以下の通りです。
- 特許の出願に関する意思決定のメカニズム
- 特許権の行使を決定する仕組み
- 特許の取得、維持、ライセンス、実施にかかる費用の配分
- 共同所有者が負担金を支払わない場合の対応の仕組み
- 特許の使用、ライセンス、および実施から得られる収益の配分
- 侵害訴訟への参加義務
解説
アメリカにおける特許の共同保有はものごとを無駄に複雑化させ、特許の価値を大きく下げるものなので、おすすめはしません。確か、特許の共同保有に関するルールは日本とは大きく違ったと思うので、日本の感覚でアメリカの特許の共同保有を行ってしまうと後で大変になってしまいます。
しかし、これからの時代、自社だけで完結するプロジェクトよりも、第三者と共同で研究や開発を行う場合が多くなると思うので、その際に結ばれるJoint Development Agreement(JDA)では、共同で行われる活動で産まれた発明に関してどちらが権利を持つかを明確にしておくべきでしょう。
このときに、上記の理由から特許の共同保有はなるべく避けるべきです。技術や製品など住み分けができるところで明確なラインを引き、共同開発であっても、どちらかの会社が100%の権利を持つようにするべきです。また、その際は、相手側の従業員に発明者がいることがほとんどなので、協力を求めるような条項をJDAに加えると共に、特許明細書もなるべく早く作成し、発明者からDeclaration(またはOath)にサインをしてもらい、(特に相手側の従業員には)譲渡書もなるべく早く署名してもらえるようにしましょう。
まとめ作成者:野口剛史
元記事著者:Bryan K. Wheelock. Harness, Dickey & Pierce, PLC(元記事を見る)