原則、すでに公開された発明は特許にできませんが、アメリカには開示に関して1年間の猶予期間があります。そのため、もし仮に発明者が著者である刊行物が出願前に公開されたとしても、その文献を先行技術文献として取り扱わないようにすることができます。今回はその102条(b)(1)(A)における例外と、使われる宣誓書、そして、そこに書くべき内容を、よくある共同著者が発明者であるケースを用いて考えていきます。
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35 U.S.C. 102(a)(1)により、発明がそれ以前に発行された刊行物に記載されたものである場合、またはその刊行物から見て明らかなものである場合は、特許を受けることはできません。しかし、発明者が先行技術として引用された刊行物の主題の著者である場合、新規性・自明性に関する拒絶を克服する方法があります。
アメリカ特有の1年間の猶予期間
多くの国と同様、米国の特許制度は、発明者が発明を公表した場合、その公表された発明について後に特許出願することを禁じています。しかし、米国の制度では、発明者が特許を出願できる猶予期間(grace period)が、公開から1年間設けられています。
具体的には、開示された主題の出所が発明者または共同発明者である場合、特許出願の有効出願日より1年未満に作成された刊行物は先行技術として使用することはできません:
- クレームされた発明の有効出願日前1年以内になされた開示は、以下の場合、(a)(1)に基づきクレームされた発明の先行技術とはならない、もし…
- (A) その開示が、発明者もしくは共同発明者、または発明者もしくは共同発明者から直接もしくは間接に開示された主題を入手した他の者によってなされた場合
(b)Exceptions.—
(1)Disclosures made 1 year or less before the effective filing date of the claimed invention.—A disclosure made 1 year or less before the effective filing date of a claimed invention shall not be prior art to the claimed invention under subsection (a)(1) if—
(A)the disclosure was made by the inventor or joint inventor or by another who obtained the subject matter disclosed directly or indirectly from the inventor or a joint inventor; or
宣誓書で例外適用を示す
特許庁の規則では、ある開示が先行技術でないことを証明するために宣誓供述書(affidavit)または宣言書(declaration)を提出する仕組みを規定しています。特許庁が、発明者又は共同発明者自身の公開について特許出願を拒絶した場合、102条(b)(1)(A)の例外を適用するためには、出願人が「開示が発明者又は共同発明者によってなされたこと、又は開示された主題が発明者又は共同発明者から直接的又は間接的に入手されたことを立証する」宣誓書を提出することにより、拒絶を克服することができます。37 CFR 1.130(a)。ただし、注意しなければいけない点としては、この方法は米国特許法による1年間の猶予期間を活用したものなので、「拒絶が、クレームされた発明の有効出願日より1年以上前になされた開示に基づく場合は利用できません」。37 CFR 1.130(c)。
よくある共同著者が発明者である状況における対処方法
よくある状況は、特許出願の発明者が、グレースピリオド中になされた刊行物の共同著者であった場合です。例えば、刊行物の筆頭著者は発明者であっても、他の共同著者が発明者でない場合があります。
このような共同著者のシナリオでは、審査官は、反対の証拠がない限り、額面どおり受け入れるよう指示されている2つの項目を宣誓書に記載する必要があります:
(1)「発明者または共同発明者(またはその組み合わせ)が開示の主題を発明したという、発明者または共同発明者の明確な陳述」、および、(2)「開示の主題に関する合理的な説明」(“an unequivocal statement from the inventor or a joint inventor that the inventor or joint inventor (or some combination of named inventors) invented the subject matter of the disclosure”)
(2)「追加の著作者の存在に関する合理的な説明」(“a reasonable explanation of the presence of additional authors”)
例えば、(1) 申告人が「本明細書で請求する主題の唯一の発明者であること」、(2) 「他の著者は…共同発明者ではなく、単に(申請書を書いた本人の)指示・監督の下で作業していた学生である」と記載することができます。In re Katz, 687 F.2d 450, 453 (C.C.P.A. 1982)(一般に「Katz宣言」と呼ばれている)。
この種の拒絶を解消するため追加の情報は、M.P.E.P. 717および2155を参照するといいでしょう。
参考記事:Disqualifying an Inventor’s Prior Publication as Prior Art – Invoking §102(b)(1)(A)