2017年の最高裁によるTC Heartland判決以降、特許訴訟が争われる裁判地(Venue)が大きく変わりました。また、統計データから特許訴訟のスタイルにも大きな傾向の変化の兆しが見られます。
The Eastern District of Texasでの特許訴訟が大幅に減少
TC Heartland判決については、OLCで様々な記事を取り上げてきましたが、簡単に言うとそれまで特許権者有利で有名だったthe Eastern District of Texasで特許訴訟を起こすことが難しくなり、訴える企業の所在地を管轄に治める裁判地などでの特許訴訟の割合が大きくなりました。
法律分析ツールのLex Machinaから得られたデータによると、2008年1月から2017年5月までのPre-TC Heartlandの期間の裁判地(Venue)のトップ3の割合は以下の通りです。
- 27% in the Eastern District of Texas,
- 15% in Delaware,
- 14% in the Central and Northern Districts of California
一方で、2017年5月TC Heartland判決以降、2019年9月16日現在の裁判地(Venue)のトップ3の割合は以下の通りです。
- 27% in Delaware,
- 16% in the Central and Northern Districts of California
- 14% in the Eastern District of Texas
このように、the Eastern District of Texasでの特許訴訟の割合が大きく下がりました。また、2018年以降、テクノロジー企業が多く存在するthe Western District of Texas では、特許訴訟数が165%も増加しています。
多地区訴訟に注目
また、TC Heartland以降、多地区訴訟(Multidistrict litigation)に注目が集まっています。議会は28 U.S.C. § 1407において、1つ以上の共通の事実上の問題が関わる民事を1つの訴訟にまとめることを許可しています。このような複数の訴訟を1つにまとめる手続きは関連訴訟全体を見た際のコスト削減が期待できます。また、多地区訴訟が早期の和解につながる可能性もあります。例えば、SEP特許の侵害訴訟では多くの被告企業が訴えられますが、多地区訴訟のパネルによる公判が開かれる前に、関連するすべてのケースを解決することも可能になってきます。
2019年9月16日現在、特許訴訟で多地区訴訟になっている案件は9件ですが、特許権利の行使が様々な地域の地裁でおこなわれる中、それらの各地に散らばった被告企業が集まって多地区訴訟をおこなうことも今後増えていくかも知れません。
まとめ作成者:野口剛史
元記事著者:Vigen Salmastlian. Fenwick & West LLP(元記事を見る)