パテントマーキング(特許表示)は、適切に行うことで訴訟における賠償金額に大きな影響を与えます。マーキングは任意で、特許と商品の関連性をチェックし、定期的に管理・維持していく手間暇がかかりますが、アメリカでの権利行使を真剣に考えている企業であれば、そのような費用やリソースを割いても十分な見返りが期待できる試みだと思われます。
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米国の法律では、パテントマーキングは任意です。では、なぜ特許表示をするのでしょうか?簡単に言えば、損害賠償のためです。損害賠償を請求したいのであれば、物品が特許であることを通知しなければなりません。その通知には、2種類あり、実際の通知(Actual notice)と推定的通知(constructive notice)があります。実際の通知とは、送達された訴訟の訴状や停止命令書(cease-and-desist letter)の送付などです。その一方で、推定的通知とは、表示に関する法令に従った特許表示です。
パテントマーキングと損害賠償を示す例
パテントマーキングには、物理的なもの、すなわち製品への表示と、バーチャルなもの、すなわちウェブサイトへの表示の2種類あります。
以下の簡単な例を用いて、パテントマーキングが損害賠償にもたらす違いについて説明します。
A社は、特許を取得した直後に、製造・販売する製品に適切なマークを付しました。しかし、B社はマーキングは行いませんでした。
侵害者はA社もB社も知らないうちに特許製品の販売を開始します。このような侵害行為を受け、両社は法律顧問に相談し、侵害の有無を判断してもらい、侵害者に排除措置命令書を送るか、訴訟を起こすことを考え始めます。
後に裁判において侵害が認められたと仮定すると、「A社」は推定的通知を行った日、すなわち自社製品に適切な表示を開始した日まで遡って損害賠償を得ることができます。
その一方で、「B社」は、実際に通知した日、すなわち、排除措置命令書を送付した日や訴状を送達した日からしか損害賠償を受けることができなくなります。
このことが、損害賠償の額にとってどれほど大きな意味を持つかは想像に難くないでしょう。
これが任意であるパテントマーキングをおすすめする理由です。