AI技術の特許出願は増加していますが、特許法101条に基づく法的課題に直面しています。特に、機械学習技術が抽象的アイデアと見なされることがあり、その特許適格性 (patentable subject matter) が問われやすい傾向にあります。特許適格性の問題はAliceテストによって判断されますが、特許でクレームされている具体的かつ従来にない機械学習技術に焦点を当てるというような出願前の事前対策をおこなうことによって、AI発明の特許可能性に関する厳しい基準をクリアーすることが重要になってきます。
AI関連の特許出願で避けられない特許適格性の問題
人工知能(AI)技術の進化に伴い、機械学習モデルからその応用に至るまで、特許出願が急増しています。しかし、AI技術は機械学習アルゴリズムとコンピューティングパワーに依存しているため、AI発明は特許法101条の法的基準に照らして課題に直面しています。
第101条は、特許の適格要件を定めており、特許は「新規かつ有用なプロセス、機械、製造、組成物、またはそれらの新規かつ有用な改良」のみに付与されると規定しています。35 U.S.C. § 101. Alice Corporation v. CLS Bank International事件において、米国最高裁判所は、クレームされた発明が特許保護に適格であるかどうかを判断するために、(1)発明のクレームが抽象的アイディアのような特許不適格な概念に向けられているかどうか、(2)特許不適格な概念に向けられている場合、クレームが抽象的アイディアを 「特許適格なアプリケーション」(“patent-eligible application”)に変換するのに十分な 「発明的概念」(“inventive concept”)を記載しているかどうか、という2つのプロングから成り立つテストから構成されることを定めました。
最新の事例で見るAI発明における特許適格性の壁
デラウェア州での最近の事例では、裁判所は、原告の特許は 「既知の一般的な数学的技法を使用した」抽象的なアイデア以上のものをクレームしていないと判断しました。Recentive Analytics, Inc. v. Fox Corporation, No. 22-cv-1545-GBW, 2023 WL 6122495, *8 (D. Del. Sept. 19, 2023) (上訴中)。この2つの特許はいずれも機械学習技術に関するもので、(1)テレビネットワークのスケジュールを生成する方法、および(2)さまざまなパラメータを考慮してイベントスケジュールを最適化する方法に関するものでした。
Aliceの第1項について、裁判所は、特許は情報の収集と分析に関するものであり、「特許不適格な概念に向けられたクレームのよく知られたクラス」であると判断しました。裁判所は、アニメキャラクターの唇の同期と表情をアニメーション化するソフトウェアを記載したクレームは抽象的なアイデアに向けられていないという判例(McRO, Inc. v. Bandai Namco Games America Inc. See 837 F.3d 1299 (Fed. Cir. 2016) )との差別化を図りました。まず、Recentiveの方法によって作成されたテレビネットワークマップは、McROにおける「作成されたアニメキャラクターよりも具体的でない」としました。次に、「人間とアルゴリズムの両方がテレビの視聴率を最大化しようとするプロセスを変える」ことは、McROにおける「人間のアーティストによって行われる伝統的に主観的なプロセスを数学的に自動化されたプロセスに変える」こととは異なると判断しました。最後に、Recentive社が主張するルールは、McROにおける「特殊で型破りな」ものとは異なり、「従来の機械学習技術」の範囲内のものだと判断されました。
Aliceの第2項のプロングにつて、裁判所は、特許は 「発明的概念」を含んでいないと判示します。その代わりに、「機械学習の制限は、広範な機能用語でのみ説明され、モデルパラメータやトレーニング技術に関する指針はほとんど提供されいない」と指摘します。例えば、特許は「任意の適切な機械学習技術」と「ニューラルネットワークまたはサポートベクターモデルのいずれかを使用し、それを反復的に訓練する」ことを漠然と開示しているだけにとどまっていました。
Recentive社は、クレームされた発明を人間の脳が同じ情報を処理する方法と区別しようとし、「人間はデータを定量的に処理するのではなく、定性的に処理する」こと、および「可能な解の数は人間が処理できる数をはるかに超えている」ことを強調しました。しかし、裁判所は、人間の脳がAIと同じように情報を処理するかどうかは関係ないとして、これらの主張を退けました。むしろ、「関連する問題は、機械学習プロセスが数学的アルゴリズムであるかどうか」であることを示しました。裁判所は、データや計算能力の多寡は意味をなさないと判断し、「人間は機械学習を行うための数学的手法に(ゆっくりではあるが)取り組むことができる」という考え方を示しました。
すべてのAI関連発明が特許として成立しないわけではない
このようにAI関連の発明を特許として権利化することには課題も多くありますが、先行技術のニューラルネットワークを改良するための新規な方法を対象とするクレームは、依然として適格である可能性があります。裁判所は、USPTOのガイダンス(M.P.E.P. § 2106.04(a)(1))で特定された「顔検出のためのニューラルネットワークのトレーニング方法」が、「数学的変換を使用したトレーニングセットの拡張と、特徴的なトレーニング方法を使用した偽陽性の最小化」として、そのような方法を説明していることに言及しています。しかし、Recentive社のクレームはそのような方法に類似しているものとは判断されず、単に「手作業プロセスへの機械学習技術の適用に関する」ものと認識されました。
出願前の十分な対策が必要
Recentiveのケースを念頭に置くと、特許権者は、例えば、特許でクレームされている具体的かつ従来にない機械学習技術に焦点を当てることによって、自社のAIクレームを特許可能なものにするものを明確にする準備をする必要があるでしょう。
参考記事:AI Trends For 2024 – The “Abstract Ideas” Behind Artificial Intelligence Inventions | MoFo Tech