自動化OA応答ツールでOA対応の効率を劇的に上げる

特許に関わる業務、特にOA対応に関しては、自動化ツールの活用は有効だと考えています。OA対応の「質」に影響しないところで時間がかかっていたところを自動化ツールを使うことで作業の簡略化を行い、そこでできた時間やリソースをOA対応時の主張を更に磨く作業やクレーム補正にあてることでより「質」が高く素早いOA対応ができることが期待されています。

権利化するためには、効率的なオフィスアクションレスポンスが必要です。特許審査官からの拒絶通知には、シェル・レスポンスと呼ばれる出願人からの正確な署名入りの書面による回答に依存しますが、この回答は、出願プロセスを継続するためには、審査官が行った拒絶理由の理由のすべてに対して対応するものでなければなりません。このような回答書の作成には時間がかかりますが、自動化ツールを使うことによってより効率的に作業を行うことができます。

応答は通常、パラリーガルが作成します。パラリーガルは、特許審査官から拒絶通知を受けた後、応答を必要とする問題のアウトラインを作成します。その後、弁護士が技術的および法的な議論を追加します。手動でこのような応答を作成すると、オフィスアクションで提起された拒絶に応じて、30分から2時間の作業時間がかかり、エラーが発生することがあります。この点において、AIが便利になる場合があります。

シェルレスポンスの自動化

特許原案作成ツールの自動化とAIは、退屈で時間のかかる編集や書式設定の作業を実行します。シェルレスポンスにおいて、典型的な自動化ツールは以下のようなデータを追加します:

  • bibliographic データ
  • 標準的なフロントページの詳細
  • ヘッダーとフッター
  • 反対意見を示すセクション
  • クレームの完全なリストと対応するステータスインジケータの表示

これらすべての作業を最小限の労力で自動化できるため、弁護士は技術的な主張の起草やクレームの修正に集中することができます。

自動化されたシェル応答ツールを使用することで、時間とコストの両方を節約することができるのです:

  • オフィスアクションの精度を向上させる
  • オフィスアクション応答の起草時間を短縮させる
  • 引用文献の自動検索
  • カスタマイズ可能なテンプレートのオプション
  • オフィスのアクション拒否分析の合理化

シェル応答自動化ツールによっていは、以下のようなものも提供します:

  • SmartShellは、弁護士が直接応答を編集して、異議に応じて技術的および法的な議論を追加することができる
  • PatentOptimizerは、標準テンプレートまたはカスタムテンプレートを使用して、包括的なオフィスアクションシェルレスポンスを生成できる。異議、拒絶、引用文献が含まれているので、専門家は選択したオフィスアクションを簡単に分析し、潜在的な対応アプローチをプレビューし、オフィスアクションで引用された先行技術文献をキャプチャーして、迅速なレビューと更なる分析を行うことができる。

自動化ツールは将来以下のようなことにも対応できるようになるでしょう:

  • オフィスアクションのレビューや光学的文字認識を用いた編集可能なバージョンへの前クレームセットの要約と変換の提供
  • オフィスアクションで提起された異議のタイプの識別
  • クレーム識別子
  • 料金の計算(必要に応じて)

自動化ツールを使用することで、起草や分析が合理化され、弁護士はより技術的で法的な業務に集中することができます。さらに、特許専門家に最適な自動化ツールは、質の高い仕事を生み出すことができるため、クライアントとの強固な関係を築くことができるでしょう。

解説

出願費用のコストカット、納期短縮というのは、事務所であれ、社内の知財部であれ、出願業務において常に何らかのKPI(Key Performance Indicator)に関わっているのではないでしょうか?

しかし、人が手作業で行う限り、「効率」の改善には限りがあり、需要にばらつきがある中、その時々に最適な「人材」を必要な数だけ揃えるというのは難しいでしょう。特に、雇用が守られている日本で、柔軟な需要の変動における必要な人材の確保と調整は難しいでしょう。

そこで、AIなどの技術を用いた自動化ツールが注目されています。特許の分野において、特に出願・OA対応の分野では、定型的にできる事務処理の割合が多く、そこに自動ツールを適用することで、劇的な効率化を図り、そこで生まれた生産性を重要な、自分の主張をより完成度の高いものにしていくための時間やクレーム補正の時間に使うことができます。

このようにOA対応の「質」に影響しないところで時間がかかっていたところを自動化ツールで賄うことによって、納期までの時間を短縮でき、質の高いサービスを維持し、場合によってはコストカット(や利益率の改善)が行えることが期待されています。

今後は、知財業界でも様々なツール出てくることでしょう。そのようなツールをうまく活用し、次の時代に対応するところが、差別化でき、生き残れるのだと思います。

しかし、ツールを導入したらすぐに劇的な効果があるというものではなく、あくまでも自社や事務所の仕組みにあったものを選び、徐々に実装することをおすすめします。最初はうまく行かないこともあるので、品質管理に気をつけながら、慎重にツールの導入を行うことをおすすめします。

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まとめ作成者:野口剛史

元記事著者:Deepak Bhandari. Effectual Knowledge Services Pvt Ltd(元記事を見る

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