米国著作権・特許庁が2023年1月にNFTに関する公開座談会を実施へ

NFTと知財の関わりにはまだ課題も多く、不透明な部分や誤解されている部分も多いのが実情です。このことを重く見たのか、米国著作権と特許庁がNFTと知財の関わりに関して共同研究を行うことになり、その一環として、公からの意見の募集と公開座談会を行います。特に公開座談会は合計3つ1月中に開催される予定で、それぞれ「特許」、「商標」、「著作権」をテーマにしたものが企画されています。すでに事前登録できるものもあるので、興味がある方はぜひ。

NFTと知財の関係

NFTは、暗号通貨とは異なり、コピー、代替、細分化できないユニークで個別化されたデジタル識別子を表します。どちらの技術もブロックチェーン技術上に構築され、存在します。NFTも暗号通貨も、特許、商標、著作権制度と複雑な関係にあります。

例えば、米国の著作権法はNFTの所有者にNFTの鋳造に関連するデジタルアートワークの権利を自動的に与えるものではありません。クリエイターが何らかの知的財産権を譲渡する積極的な手段を講じない限り(例えば、NFTに関連する作品に対して標準的で正式な著作権ライセンスを締結する等)、その人はデジタルアート作品へのリンクを購入するに過ぎません。

NFTの中には、原作のコピーや二次的著作物に分類されるものもあります。米国の著作権法では、著作権者のみが原著作をNFTに変換する権限を有します。米国著作権法では、原著作物をNFTに変換する権限は著作権者にしかありません。自分が所有していない作品に関連してNFTを販売しようとすると、米国著作権法では罰金や懲役刑が科される可能性があります。

特許の面では、NFTまたはブロックチェーンの特定の反復が技術的に貢献し、その他の特許の基準をすべて満たす場合、すなわち抽象的でない場合、NFTは特定のタスクまたは目的を満たす他のソフトウェアと同様に特許可能です。

議員による共同研究の依頼

2022年6月9日、パトリック・リーヒー上院議員とトム・ティリス上院議員は、NFTに関連する様々な知的財産法および政策の問題を扱う共同研究を実施するよう、両庁に書簡を送りました。この書簡は、「技術、創造、学術の各分野からなる民間部門と協議する」よう両院に要請しています。

公開座談会と事前登録

さらに最近、米国著作権局と米国特許商標庁(USPTO)は、NFTに関する共同研究について、意見提出期間の延長と新しいラウンドテーブル(座談会)の日程を発表する連邦官報を発行しました。特に、利害関係者の要望に応え、両庁は、2023年1月9日の意見提出期限を延長します。

この通知では、公開ラウンドテーブルの最新の日程も発表されています。特許ラウンドテーブルは1月26日、商標ラウンドテーブルは1月24日、著作権ラウンドテーブルは2023年1月31日に開催される予定です。

バーチャルラウンドテーブルシリーズの最初のプログラムは、特許とNFTに焦点を当てています。ライブストリーミングイベントへの参加には登録が必要です。登録は、このリンクから行うことができます。

2回目のプログラムは、商標とNFTに焦点を当てたもので、登録はここからできます。3つ目のプログラムは、著作権とNFTに焦点を当てたものです。登録はまだ一般に公開されていませんが、USCOはラウンドテーブルの開催日近くに登録ページが公開されることを確認しています。

これらの研究は、両局が継続的に行っている新技術とその知的財産権への影響に関する研究です。技術者、特許権者、実務者、学者、産業界の代表者など、パネリストがそれぞれの知識を共有し、米国特許商標庁(USPTO)と米国著作権庁が実施する共同研究に情報を提供する機会を提供するものです。 

参考文献:U.S. Copyright, Patent and Trademark Offices to Conduct Publicly Available Roundtable Discussions Regarding NFTs in January 2023

ニュースレター、公式Lineアカウント、会員制コミュニティ

最新のアメリカ知財情報が詰まったニュースレターはこちら。

最新の判例からアメリカ知財のトレンドまで現役アメリカ特許弁護士が現地からお届け(無料)

公式Lineアカウントでも知財の情報配信を行っています。

Open Legal Community(OLC)公式アカウントはこちらから

日米を中心とした知財プロフェッショナルのためのオンラインコミュニティーを運営しています。アメリカの知財最新情報やトレンドはもちろん、現地で日々実務に携わる弁護士やパテントエージェントの生の声が聞け、気軽にコミュニケーションが取れる会員制コミュニティです。

会員制知財コミュニティの詳細はこちらから。

お問い合わせはメール(koji.noguchi@openlegalcommunity.com)でもうかがいます。

OLCとは?

OLCは、「アメリカ知財をもっと身近なものにしよう」という思いで作られた日本人のためのアメリカ知財情報提供サイトです。より詳しく>>

追加記事

契約
野口 剛史

1年を振り返って:2022年の主要なSEP/FRANDの議論

2022年のIPカンファレンス、ウェビナー、シンポジウムでは、SEPとFRANDに関する話題が大半を占めました。多くのパネルディスカッションでは2021年と同様の問題が取り上げられましたが、2022年の会話はほとんどがSEPの対象となる標準が実装された業界(例:スマートフォン、5Gライセンス、自動車、エネルギー、家電、IoT)に関連するものでした。このトピックが進化を続ける中、これらの進行中の議論から得られる重要なポイントを検証してみたいと思います。

Read More »
特許出願
野口 剛史

AFCP 2.0が延長される:改めて制度のおさらい

2021年10月12日、USPTOは最終特許審査後(after-final patent prosecution practice)の実務のためのプログラム「AFCP 2.0」を2022年9月30日まで延長しました。USPTOは、審査を迅速化し、審査官と出願人の接触を増やすために、2013年に「パイロット」プログラムを開始しました。USPTOは、このプログラムの結果について統計を発表していませんが、出願人は今でもAFCP 2.0をある程度の頻度で使用しています。USPTOは、プログラム開始以来、毎年このプログラムを更新しています。

Read More »
paper-documents
AI
野口 剛史

AIツールで特許明細書は書けるか検証してみた

AIがクレームから特許明細書を書いてくれたら便利ですよね?ということで、今回は、ある程度まとまった文章を書くことが得意な生成AIツールを使って、クレームから特許明細書のドラフトを書くことができるか検証してみました。

結論から言うと、明細書とは程遠いものがアウトプットされて使い物になりませんでした。しかし、部分的には評価できるところもあり、工夫次第ではちょっとした付加価値をつけることはできるかもしれません。また機能面での問題とは別に、実務で用いるとなると、出願前の特許クレームという機密情報の取り扱いという点でも課題はあります。

Read More »