NFTの人気が高まる中、デジタルアートの分野で著作権上の問題が懸念されていています。特に、NFTの所有とアートの所有権の問題、NFTによる著作権侵害の増加予測、プラットフォームにおけるDMCA対策など、NFTのビジネスチャンスと共に問題も大きくなっています。
NFTの所有と関連するデジタルアートの著作権上の所有権は別もの
原則NFTを購入して「所有」しても、そのNFTに関連しているデジタルアートの著作権上の所有権はNFT購入者に与えられません。つまり、アートに関連するNFTの所有とオリジナルのアートの著作権は別々に存在しています。そのため、著作権者が持っている著作物を複製・販売する権利や、著作権自体を譲渡すること、二次的著作物を作成する権利などはNFT所有者にはありません。
著作権とNFTの所有が別々にあることから、NFT所有者が関連するデジタルアートをシェアする方法も制限されそうです。例えば、複製する権利は著作権者が持っているので、NFT所有者が関連するアートの画像を複製して共有したり、Instagramなどのプラットフォームで共有した場合、著作権上の問題を起こす可能性があります。
誰でも作れるNFTの人気が著作権侵害トラブルを助長する
次に問題なのが、実際に著作権上所有権を持っていない人でも画像からNFTを作成できてしまう点です。技術的に誰でも作成することができるため、NFTの販売に絡み著作権侵害のトラブルが多く発生することが懸念されています。
このような侵害案件が裁判所で争われる場合、「新しい」問題なので訴訟コストの増加と判決がどうなるかわからない不確実性に悩まされることになります。
更に、NFT自体に著作権が認められる可能性もあり、関連するデジタルアートの著作権とは別に「複数」の著作権が発生する可能性があります。そうなってくると著作権の問題が更に複雑になり司法で対応できなくなることが懸念されます。
プラットフォーマーにもNFTに関するDMCA対策が求められる
このようにNFTは著作権の問題が生じるので、NFTを扱うプラットフォーム事業者はデジタルミレニアム著作権法(DMCA)やその他の法律に基づき、著作権を侵害するコンテンツの削除、削除要請への対応などの義務を負う可能性があります。
まだ、DMCAがNFTのプラットフォームにどの程度適用されるかはまだ定かではありませんが、すでにいくつかのNFTオークションサイトでは、DMCAを利用して不正なNFTを削除しています。例えば、NFT マーケットプレイスである OpenSea は、その利用規約においてそのことが明記されています。
参考文献:”NFT Risks and Opportunities in the IP, Advertising, and Brand Management Spaces” by David Ervin, Deirdre Long Absolonne and Carissa Wilson. Crowell & Moring LLP