NFTと著作権の所有権・譲渡に関する問題

最近ではレアなNFTが高額で落札されたというニュースをマスメディアも取り上げるようになりました。しかし、注意してほしいのが特に明記されていない場合、NFTの購入者がNFTに関連付けられているもの(著作物、本、音楽、美術作品、デジタルアートなど)の著作権を得ることはありません。今回はそんな勘違いをした団体の的はずれなツイートが炎上したニュースをお伝えします。

先日、分散型自治組織(decentralized autonomous organization)Spice DAOが、Frank Herbert と Alejandro Jodorowskyの未完成映画『Dune』の未発表原稿を266万ユーロ(300万ドル強)で落札し、Twitterが大炎上しました。

このような大きな反応があったのは、原稿の購入によるものではなく、むしろ、このDAOが「ミッション」を掲げた後に起こったものです。

  1. 公開する(法律で認められている範囲内で)
  2. 本作をモチーフにしたオリジナル限定アニメを制作し、ストリーミングサービスに販売する
  3. コミュニティからの二次創作を支援する

このような的はずれな発言をした結果、Spice DAOは、著作権法を理解していないと思われたため、すぐに大きな嘲笑を浴びました(もちろん、これはすべてジョークかネット上の悪ふざけである可能性も否定できませんが…)。

上記のようなことは、著作権の権利譲渡に関してよくある誤解を示しています。

NFT(「Non Fungible Token」)への関心が高まり、販売数が増えるにつれ、頻繁にこのツイートのような発言を耳にします。今ではさまざななミュージシャン、アーティスト、そしてスポーツ選手がNFTを販売していて、NFTを身近に感じることが多くなりましたが、その特徴について理解している人はまだ少ないのが現状です。

NFTの特徴

NFTは、ブロックチェーン上で検証されたユニークなIDを持つデジタルファイルです。NFTは、ユニークなオーディオ録音、ビデオファイル、その他の芸術作品など、1つしかない「オリジナル」を表すことができます。NFTはまた、限定されたシリーズの一定数のコピーのうちの1つ(例:限定10個の内の1つ)を表すこともできます。理論的には、NFTは美術品、音楽、ビデオ、収集品、トレーディングカード、不動産など、ほぼすべての実在・無形の財産を表すことができます。最終的にNFTは、ブロックチェーンで具現化されたデジタル版の信憑性(authenticity)を証明するものとなりえます。

ただし、NFTを購入しても、購入契約にその権利が明示的に記載されていない限り、著作物に関する独占的な著作権の権利は付与されません

米国著作権法第17条第204項(a)(17 USC § 204(a))に基づき、「法律の運用によるもの以外の著作権所有権の移転は、譲渡証書、または移転に関するメモや覚書が書面で、譲渡された権利の所有者または当該所有者の正当な権限を有する代理人が署名していなければ有効ではない」 とされています。

したがって、著作権の所有権、または複製、派生物の作成、コピーの配布、公の実演、公の展示の権利など、著作権所有者に与えられた排他的権利のいずれかを譲渡する唯一の方法は、これらの著作権を譲渡する署名入りの書面での契約を締結することなのですす。

現在、NFT、希少本、その他の作品を購入する場合、購入する作品と、その作品に付随する権利、または付随しない権利について知っておくことが重要です。希少な作品やデジタル作品を購入する際には、考慮すべき重要な要素があります。そのため、大金を支払って購入する前に、自身の権利を十分に理解するためにも、これらNFTの問題に精通した弁護士に相談することをおすすめします。

参考文献:Copyright Ownership, Transfers, and NFTs

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