超党派の「米国知的財産保護法案」(The Protecting American Intellectual Property Act)が米国上院と下院で可決され、バイデン大統領に送られ、署名されました。この法案は、知的財産の保護をうたっていますが、その目的は企業秘密の保護です。しかし、審議に時間を書けられなかったのか、問題のある法案のようです。
定義が明確でなく、処置対象になるか不透明
この法案は企業秘密の保護を目的に、外国人に対する制裁措置を可能にするものですが、まず、外国人がこの法律に違反し、大統領による強制的な制裁措置の対象となるためには、多くの未定義の条件、つまり基準を設けなければなりません。
例えば、違反者となるためには、外国人は故意に米国人の企業秘密の重大な窃盗に従事しなければなりません。この法律の違反者となるためには、それらの違反が、米国の国家安全保障、外交政策、または経済的健全性もしくは財政的安定性に対する重大な脅威となる可能性が合理的に高くなければなりません。
この法案では、営業秘密(trade secrets)という用語は定義されておらず、営業秘密の要素が満たされているかどうかを判断するための客観的な基準も書かれていません。また大統領は、毎年議会に提出することを義務付けられているリストにどの企業を特定するかを決定することに関して大きな裁量権が与えられています。
このリストに載ると、大統領は違反者に対して5つの制裁を課さなければならず、その企業のCEOと取締役会のメンバーに対して制裁を課すこともできます。
報告する米国企業への保護もなし
もう1つの問題として、企業秘密が故意に盗まれたことを報告する米国企業に対する保護の問題があります。
これらの企業が、自社が企業秘密を所有していること、そして、その企業秘密が盗まれたことを政府に知らせる際に、そのような行為が自社の不利益になる可能性があります。具体的には、報告する企業は、自社の営業秘密が政府による開示や訴訟におけるディスカバリーの対象になることは避けたい問題ですが、この法案にはそのようなことにならないような保証が明確に示されていません。
このような法案で本当に目的としている取締ができるのか?批判する声もあります。どのような結果になるかは、この法律が実際に機能してからでないと判断できないので、もうしばらく待つ必要があります。