実務家は注意: MPEP規則の変更により、最終拒絶後の対応に大きな変化があるかも?

MPEPの改定を皆さんは注意深く見たことがありますか?今年の6月にあった改定で、最終拒絶後の対応を戦略的に考慮しなければいけないかもしれないような変更がありました。今回はこの変更と、予測される審査の変化について考察してみます。

2020年6月の特許審査手続マニュアル(MPEP)の最新改訂に伴い、MPEPのセクションの1つに微妙ではあるが、潜在的に重要な変更がありました。このセクションは、706.07(b)に基づく第一次最終拒絶(FAFR。first-action final rejection)の実務の変更に関連しており、最終的には、FAFRを発行する基準が継続出願及び継続審査請求(RCE。request for continued examination)出願にまで拡大されることになります。

米国特許商標庁(USPTO)は、MPEP のマークアップ改訂版を提供する慣行を廃止しているため、セクションへの特定の変更は容易に見落とされる可能性があります。706.07(b)に関して、この変更は、継続出願(又は先の出願の代替出願)又は RCE のクレームが、そのクレームが先の出願のクレームと同一であるか、又は特許的に区別がつかない(either identical to or patentably indistinct from the claims )場合に、最終的に拒絶される可能性があることを示しています。

今回の改定で、706.07(b)の基準を「同一の発明」から「特許的に区別がつかない」も含むように拡大することで、USPTO は、審査官が継続出願及び RCE出願において、請求項に最小限の補正以上の補正があった場合でもFAFRを行うことを許可しているように見えます。MPEP第804 条でさらに定義されているように、「同一の発明」という用語は、二重特許、すなわち同一の主題が二度主張される、言い換えれば同一の範囲であるという文脈で FAFRの目的のために定義されてきました。したがって、大多数の継続及びRCEの文脈では、歴史的には、先に審査されたものよりも広い範囲又は狭い範囲を含むように補正されたクレームは、同一の範囲を有しないため、通常の拒絶通知(non-final office action)(または許可)を受ける権利を有することになります。

一方、706.07 条(b)は「特許的に区別がつかない」を明確に定義していないですが、同条は37 C.F.R.1.145に言及しており、異なる発明とみなされるクレーム、すなわち、以前に請求された発明とは区別され独立しているクレームを定義しています。したがって、2020年6月の改正規則の下では、出願人がクレームの補正を行わずにRCEまたは継続を提出した場合、または以前に審査されたクレームとは区別されず独立していない補正されたクレームを提出した場合、審査官は最終的な拒絶を出す裁量権を持つことになります。

現時点では、706.07(b)項の修正を考慮して審査官がどの程度拡大したアプローチを取るかは不明ですが、修正された文言は申請者及び実務家に懸念を抱かせるものと思われます。この変更は、継続及び RCE 出願(2020 年 6 月以前に実質的な請求項の補正を行ったものであっても)に遡及的に適用されるように見えるだけでなく、変更はさらに 35 U.S.C.第 132 条と矛盾しているように見えます。現時点では、継続又は RCEでFAFRを回避するためには、出願人は最終拒絶の後の対応を行い、USPTO/審査官から (A)更なる検討及び/又は調査を必要とする新たな問題が提起された、又は (B)新たな問題が提起されたことの確認するべきでしょう。

解説

MPEPは定期的に改定がありますが、その都度にどこが改定したか、改定がどのような影響を及ぼすかを考察する記事は少ないので、今回この記事を取り上げました。

結論から言うと、今回のMPEPの変更で実務にどこまで影響があるかは未知数です。ある程度の時間が立って、分析ツールでFAFRの動向が確認できるなら、統計的なデータは取れますが、それには少なくとも数ヶ月から1年はかかると思います。

しかし、MPEPの文言上はFAFRになる可能性は広がりました。今回加わった「特許的に区別がつかない」という解釈には審査官の裁量権があるので、今後は継続出願及び継続審査請求を行う際は、そこに書かれているクレームが元になっている出願のクレームと十分「異なっている」かを確認した方がいいかもしれません。

そうでないとFAFRになってしまい、そこから新たにRCEをすると余分に費用と時間がかかってしまいます。

そのため、元記事の著者は、継続出願及び継続審査請求を行う前に、元になっている出願の最終拒絶後の対応を行い、その対応で提出したクレームが十分に「異なる」ことを審査官に認めてもらってから、継続出願や継続審査請求を行うことを提案しています。

最終拒絶後の対応の返答で審査官が「新たな問題」を提示した場合、それ自体が次に行う継続出願及び継続審査請求の際のクレームが元のクレームと比較して「特許的に区別がつかない」ということを否定するような内容を示すので、FAFRが回避できるというロジックです。

これから継続出願や継続審査請求を多様していくのであれば、無駄な費用や時間を使わないために、最終拒絶後の対応についても戦略的に行う必要があるかもしれません。

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まとめ作成者:野口剛史

元記事著者:Tina G. Yin Sowatzke. McKee Voorhees & Sease PLC(元記事を見る

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