法律事務所のM&Aとクライアントの権利

Liebowitzという何千もの著作権訴訟を起こしていて「トロール」と呼ばれていた事務所が「買収」されたという記事が上がっていました。このようなM&Aは法律事務所ではたまにあるので、このようなM&Aが起こったときのクライアントの権利について少し話します。

法律事務所のM&Aはめずらしいことではない

弁護士の免許が停止されてしまったLiebowitzのようなプラクティスはアメリカでもまれですが、それでも法律事務所が潰れたり、他の事務所と合併したり、吸収されたりすることは珍しいことではありません。特に、リーマンショックやコロナなど、大きな経済変化が起こったときや、その後数年の間はM&Aが増える傾向にあります。

あとは、ニュースにはならないものの、個人経営の事務所の弁護士がリタイヤするときに、事業を同業に売ったりすることも珍しくありません。

また、弁護士事務所はパートナー経営なので、お金の動きが不透明で、クライアントが多くいて、大量に弁護士を雇っている大規模な事務所でさえ、突然潰れてしまうこともあります。

M&Aがあってもクライアントの意思は尊重される

さて、では自社が使っていた事務所がM&Aした場合、どうなるのでしょうか?細かな取り決めは州によって微妙に違いますが、全般的に言えるのが、M&Aされる事務所のクライアントが自動的に、M&Aした事務所のクライアントになることはありません。

弁護士がある事務所から別の事務所に移るときと同様に、法律事務所が売却されたとき(あるいは他の事務所と合併したとき)、クライアントは代理権の変更について通知されます(このような通知義務があるので)。

その時点で、依頼者は、新しい事務所に依頼を続けるか、他の弁護士に依頼するかを選択することができます。規則では、クライアントの選択が最も重要であると明記されている州がほとんどで、クライアントは特定の弁護士や事務所と仕事をすることを決して義務づけられないことを非常に明確にしています。なので、M&Aのような事態が起こったときだけでなく、クライアントは雇っている弁護士や弁護士事務所をいつでも「クビ」にできることを忘れないでください。(これは原則、特許(法律)事務所でも同じです。)

また、新しい事務所に依頼し続けるとしても、一般的な料金システムやレートが前の事務所と異なる場合があります。しかし、そのような場合であっても、一般的に、料金契約に関しては、依頼者と以前の事務所の間の既存の料金契約の条件を尊重することが普通です。そうでないような場合は、新しい事務所に依頼する条件として提示するのも良いでしょう。ただ、契約の満了期間が定められていたり、レートに関しては人経費高騰の理由などである程度の範囲で値上げを認めるような内容になっているかもしれないので、そこは「通知」が来たときに確認するといいでしょう。

コンフリクトに注意

弁護士にとってコンフリクトは大きな問題で、弁護士が事務所を移る理由もコンフリクトがきっかけというケースもあるくらいです。今回のような、弁護士事務所のM&Aの場合、クライアントが多いので、その事業を引き継ぐ事務所においてのコンフリクトチェックも膨大で複雑になります。

またコンフリクトになりえるような状態が予想される場合、影響を受けるクライアントからの権利放棄がない限り、買収側の事務所が利益相反となるような案件を引き受けることはできません。そのため、M&Aが生じた際に、新しい事務所でも依頼を継続したい状況であっても、コンフリクトが解消できずに、断念せざる負えないようなことも起きる場合があります。

また、既存のクライアントの代理を続けるには、常にクライアントの同意が必要になるので、事務所からのコンフリクトの連絡がない場合であっても、そのような同意書類にサインする前に、新しい事務所に依頼する最のコンフリクトを自社でも確認できる範囲で調べるといいでしょう。

まとめ

信頼できる弁護士や弁護士事務所を見つけ、長年関係性を築いていくことは大切ですが、弁護士が別の事務所に移ったり、事務所自体がM&Aで「なくなる」ことがあります。そのような場合でも、原則クライアントの意思が尊重されるので、自社にとってベストな道を選んでもらえればと思います。

しかし、コンフリクトの問題はどの弁護士・弁護士事務所でも発生するので、弁護士(事務所)選びは、1つだけに絞るのではなく、バックアップとして2つ、3つほどと話を進めることをおすすめします。

参考文献:Could This Really Be The End?  Liebowitz Law Firm Ends Operations!

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