対象製品がアメリカに輸入されているのであれば、ITC のGeneral Exclusion Order (“GEO”)によって、販売者が特定しづらいオンライン販売でも対象製品がアメリカに輸入されることを防ぐことができます。
アメリカの特許を持っていて、その特許を侵害する製品が輸入されている場合、侵害品の輸入を止めるため、ITC訴訟を起こせるかもしれません。特に、侵害品の生産先、輸入先、販売先の特定が難しい場合、ITCはGeneral Exclusion Order (“GEO”)を許可する場合があります。GEOが得られれば、取り締まりが難しい匿名オンライン販売への有効な対抗手段になります。
今回紹介する案件で、ITCのBullock 行政判事は、以下の3つの点を考慮し、通常の救済処置である訴えられた企業にのみ適用されるLimited Exclusion Order (“LEO”)では不正輸入を防止できないと判断。そのため、GEOによる企業を特定しない方法で、侵害品の輸入規制を行いました。Certain Self-Anchoring Beverage Containers, Inv. No. 337-TA-1092 (Order No. 15).
ITCでGEOが認められるには 19 U.S.C. 1337(d)(2)を満たす必要があります。その中で特にBullock 行政判事が考慮した点が、侵害者の匿名性、侵害活動のパターン化、被告側のデフォルトです。
まず最初に、提出された証拠から侵害品を販売している会社は存在しない住所や偽りの住所を使って販売していることから、侵害元を特定するのが難しい状況にあることがわかりました。例えば、販売先の住所が外国の住居区だったり、別の会社の住所が無断で使われたりしており、電話での問い合わせでも、応答がない、受信を拒否される、回答があっても明記されている企業と関係がないと言われることが多かったとのことです。
また、販売もAmazonやeBayなどのオンライン販売がパターン化しており、提示されている販売者と侵害品の生産元との関係性が明確でないという問題点が浮き彫りになりました。
最後に、和解した企業を除く残りの被告人は、ITC調査を無視し、何も協力しなかったので、LEOが発行されてもLEOによるアメリカ輸入制限に従わない可能性がありました。
このような3点を考慮した結果、Bullock 行政判事は、特定の企業にしか適用されないLEOによるアメリカ輸入制限では、不正輸入を防止するというITCの目的を達成できないと判断。よって、企業を特定しないGEOにより侵害品の輸入規制をするという判断に至りました。
ちなみに、ITCでは他の知財(例えば、登録商標)の侵害による不正輸入も取り扱っています。実際に、今回取り上げたITC調査でも最初は登録商標の侵害も申し立てられていました。
ITC調査はとても高額で短期間で進むため、訴える特許権者としては準備も大変です。しかし、特許を侵害している匿名オンライン販売が横行していて、売り上げに大きな影響がある場合、対抗手段の1つとしてITC調査を考えてみてください。特に、今回の案件のように侵害元が特定しづらかったり、侵害がパターン化している場合、GEOの可能性も十分考えられます。
匿名オンライン販売への対策としてどのような取り締まりをおこなっていますか?
まとめ作成者:野口剛史
元記事著者: Alex Li and Vishal Khatri. Jones Day (元記事を見る)