ITC Domestic Industryの条件は5%の投資?

“significant” or “substantial” domestic industry investmentsを満たすためにはアメリカにおけるdomestic industry productの売り上げの5%以上をアメリカに投資していなければならないという、今回始めて「5%以上」という定数を示しました。この判決が今後のITC調査にどのような影響をおよぼすかを考えてみます。

ITC調査にはDomestic Industry requirementが必要

ITCにおける特許侵害の調査をおこなうには、申立人がDomestic Industry requirementという条件を満たす必要があります。そのDomestic Industry requirementを満たす1つが“significant” or “substantial” domestic industry investmentsですが、今までは明確な数字による線引きはありませんでした。

しかし、今回、Certain Carburetors and Products Containing Such Carburetors, Inv. No. 337-TA-1123, Order No. 77,において、ITCのChief Administrative Law Judge (“CALJ”) であるBullock判事が、始めてdomestic industry productの売り上げの5%以上をアメリカに投資していなければならないという判決を下しました。

法律上、明確な数字による線引きはない

判決において、CALJはITCのDomestic Industry requirementに関わるsection 337においては、明確な数字による線引きはなく、調査の事実内容や対象製品、関連市場など様々な要因によって異なることを示しました。

大企業の場合、それなりの投資が必要

“significant” or “substantial” domestic industry investmentsは事実に応じて判断されるべきなので、抽象的に見てアメリカ国内の投資が“significant” または“substantial”であるということは言えない。中小企業が金額的に小規模の投資をしているからと言って一概に条件を満たさない言うようなことはしないのと同じで、今回の申立人のような大企業の場合、“significant” または“substantial”であると判断されるためには、アメリカ国内への投資がある程度の規模であることが期待されるとしました。

売り上げと投資を比較する

そして、CALJは、申立人であるWalbroのアメリカ国内投資をdomestic industry productsの対象になっている製品のアメリカでの売り上げ、また、世界での売り上げと比較しました。その結果、Walbroの投資額はdomestic industry productsの対象になっている製品のアメリカでの売り上げのわずかな割合にしか達していないことがわかりました。さらに、CALJは、今回比較する対象はアメリカでの売り上げではなく、世界での売り上げだとし、その内容を考慮した結果、CALJは、投資が“significant”ではないという判断をしました。

過去の判例でも5%以下の投資はダメ

また、CALJ は過去4年間の判決を振り返り、国内投資が国内Domestic industry productの売り上げの5%以下だった場合に、Commission が投資が“significant” または “substantial”であると認めた判決がなかったことに注目しました。

ITCにおいて、アメリカ国内における投資が “significant”かという問題は機密情報も多いため訴訟の当事者にとって把握するのは難しい。そのため、この5%以上という数字はある程度の目安になるだろうとしました。

5%が基準になるのか?

ITC調査におけるDomestic Industry requirementの判断はケースバイケースなので、今回の5%以上という数字が基準になることはないと思います。また、今回の判決(initial determination)は、Commissionのレビュー待ちなので、Commissionが承認するのか、変更するのであれば、どのような変更が加えられるのか、まだ、明確なことは言えません。

テクノロジー企業にとって脅威?

例えば、Appleなどの代表的なテクノロジー企業は、売り上げの5%以下しかR&Dに回していません。つまり、この5%ルールが適用されるとしたら、AppleがITC調査をおこなう場合、Domestic Industry requirementを満たす1つの方法である“significant” or “substantial” domestic industry investmentsを示すことができなくなってしまいます。

まとめ

今回の判決にある5%以上というものは目安であって、すべてにおいて適用されることはありませんが、比較的技術の低い製品やアメリカ以外の売り上げが大きい製品に関するITC調査を検討する場合、“significant” or “substantial” domestic industry investments以外でDomestic Industry requirementを満たす方法がないか十分考慮するべきです。

まとめ作成者:野口剛史

元記事著者:Michael T. Renaud, Aarti Shah, Andrew H. DeVoogd, Matthew A. Karambelas and Nana Liu. Mintz(元記事を見る

ニュースレター、公式Lineアカウント、会員制コミュニティ

最新のアメリカ知財情報が詰まったニュースレターはこちら。

最新の判例からアメリカ知財のトレンドまで現役アメリカ特許弁護士が現地からお届け(無料)

公式Lineアカウントでも知財の情報配信を行っています。

Open Legal Community(OLC)公式アカウントはこちらから

日米を中心とした知財プロフェッショナルのためのオンラインコミュニティーを運営しています。アメリカの知財最新情報やトレンドはもちろん、現地で日々実務に携わる弁護士やパテントエージェントの生の声が聞け、気軽にコミュニケーションが取れる会員制コミュニティです。

会員制知財コミュニティの詳細はこちらから。

お問い合わせはメール(koji.noguchi@openlegalcommunity.com)でもうかがいます。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

OLCとは?

OLCは、「アメリカ知財をもっと身近なものにしよう」という思いで作られた日本人のためのアメリカ知財情報提供サイトです。より詳しく>>

追加記事

laptop-typing
再審査
野口 剛史

優先権出願で気をつけたいクレーム補正における記述要件不備の問題

優先権を主張した外国出願に書かれている内容が、アメリカ出願では省略されていたケースにおいて、クレーム補正が認められないという判例がありました。クレーム補正が外国出願にのみ書かれていた内容だったので記載要件不備(Lack of Written Description)と判断されてしまい、クレームに特許性がないと判断されてしまいました。

Read More »
one-way-sign
再審査
野口 剛史

CAFCが上訴中の訴訟案件に対するSAS判決の影響に言及

最高裁によるSAS判決以降、 PTAB における案件の負担が急増し、 PTAB から CAFC に上訴された訴訟案件が数ある中、 CAFC がどのように上訴中の訴訟案件に対するSAS判決の影響に言及するかが注目されています。今回、 CAFC は、PGS Geophysical AS v. Iancuにおいて、2つの重要な判決を下さいたので、その2点について詳しく見ていきます。

Read More »