IPR申立人がすべての実質的利益当事者を申立書に明記する責任を負う

Worlds, Inc. v. Bungie, Inc.において、CAFCは、特許権者がすべての実質的利益当事者(real parties in interest (“RPIs”))が含まれていないというある程度の証拠を提示した場合、IPR申立人がすべてのを申立書に明記する責任を負うとしました。

訴訟時のIPR時間制限と実質的利益当事者の問題

この判決が重要な理由は、IPRのユニークなルールにあります。特許訴訟の際、被告側は対象特許をIPRにかけることが多くあります。しかし、それには35 U.S.C. § 315(b) において時間制限があり、特許侵害の訴状がサーブされてから1年以内にIPRを行わなければいけません。また、37 C.F.R. § 42.8(b)(1)において、IPRの申立人は、申立書にすべての実質的利益当事者を明記する必要があります。

つまり、IPRの実質的利益当事者が特許訴訟にあり、訴訟から1年以上経ってしまうと、実質IPRができなくなってしまいます

このようなIPRのユニークなルールの合わせ技から、今回のIPRおけるすべての実質的利益当事者の明記の責任が当事者のどちらにあるのかが審議されることになりました。

背景

2012年、Worlds Inc. (“Worlds”)は、Activision Publishing, Inc. (“Activision”) と関連会社を地裁において特許訴訟で訴えます。2014年、Worldsは、Destinyというゲームを侵害品の一部として加えることをActivitionに伝えます。このDestinyというゲームは Bungie, Inc. (“Bungie”)という独立したゲーム・デベロッパーが開発したもので、今回のWorlds とActivisionの訴訟には当事者として含まれていませんでした。

その6ヶ月後(実にActivisionへの訴状が2年半前に送られてから)、BungieがWorldの特許に対してIPRの申し立てを行いました。このIPRに対し、特許権者であるWorldsは、ActivisionがこのIPRの実質的利益当事者として加えられるべきであると主張。つまり、上記のIPRのユニークなルールにより、ActivisionがIPRの実質的利益当事者の場合、すでに訴訟が始まってから2年半経過しているので、IPRはできないことになります。

PTABでの判決

PTABは、特許権者Worldsの主張を退け、IPRを行いました。その理由として、特許権者は、Activisionが実質的利益当事者であることを証明しなかったからだとしました。この判決のポイントは、当事者のどちらにすべての実質的利益当事者を明記する責任があるかという点です。PTABは、その責任が特許権者にあるとしました。この判決により、PTABにおけるIPR手続きが行われ、特許の特許性が議論されました。

CAFCが判決を覆す

しかし、上訴でCAFCはPTABの判決を覆し、差し戻します。CAFCは、特許権者がすべての実質的利益当事者が含まれていないというある程度の証拠を提示した場合、IPR申立人がすべての実質的利益当事者を申立書に明記する責任を負うとしました。

この判決を元に、PTABに案件は差し戻され、Avtivisionが実質的利益当事者であるかが審議されることになります。

今後の実務作業への影響

Worlds Inc. v. Bungie, Inc.では、IPR申立人がすべての実質的利益当事者を申立書に明記する責任を負うとしました。今後のIPRでは、特許権者は申立書にすべての実質的利益当事者が明記されているか確認することが大切です。もし不備があれば、IPRを止める(または、遅らせる)ための有効な手段になりえます。

 

まとめ作成者:野口剛史

元記事著者: Peter F. Snell, Daniel B. Weinger and Anthony E. Faillaci. Mintz Levin Cohn Ferris Glovsky and Popeo PC (元記事を見る

ニュースレター、公式Lineアカウント、会員制コミュニティ

最新のアメリカ知財情報が詰まったニュースレターはこちら。

最新の判例からアメリカ知財のトレンドまで現役アメリカ特許弁護士が現地からお届け(無料)

公式Lineアカウントでも知財の情報配信を行っています。

Open Legal Community(OLC)公式アカウントはこちらから

日米を中心とした知財プロフェッショナルのためのオンラインコミュニティーを運営しています。アメリカの知財最新情報やトレンドはもちろん、現地で日々実務に携わる弁護士やパテントエージェントの生の声が聞け、気軽にコミュニケーションが取れる会員制コミュニティです。

会員制知財コミュニティの詳細はこちらから。

お問い合わせはメール(koji.noguchi@openlegalcommunity.com)でもうかがいます。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。

OLCとは?

OLCは、「アメリカ知財をもっと身近なものにしよう」という思いで作られた日本人のためのアメリカ知財情報提供サイトです。より詳しく>>

追加記事

特許出願
野口 剛史

特許クレームで使われる”About”を使いこなすポイント

特許クレームでは「約」(About)という言葉が多様されていて、訴訟において「約」(About)が問題になるくらい重要な問題に発展する可能性があります。特に、製薬系の発明では特に敏感になる問題でもあります。そこで今回は、その”About”を使いこなす上で重要なポイントをまとめてみました。

Read More »
supreme-court
再審査
野口 剛史

米最高裁、PTAB判事任命の合憲性を判断へ

今回、最高裁で審議されることが決まったArthrex事件ですが、影響を受けた100件ほどのIPR以外は特に直接影響があるとは考えられていません。最高裁でどのような判断がされるかはわかりませんが、特に現在係争中(または係争を予定している)PTABの手続きに影響を与える可能性は低いと思われます。

Read More »
契約
野口 剛史

ロシアによる非友好国を対象にした知財制裁

ジェトロも日本語で情報発信していますが、ロシアが友好的でないと考える国の特許権者は、その特許の強制実施権に対していかなる補償も受けられなくなるという法令を発表しました。今回はこの概要とロシアで特許権を持つ日本企業ができそうな対応策をまとめました。

Read More »