IPRの申立人が、すでに申し出があった自分自身が当事者となっているIPRに参加することはできず、参加することによってすでに申し出があったIPRに新規のクレームや問題点を提示できない。一見何を言っているのかわからないと思うので、解説でなるべくわかりやすく説明します。
判例:FACEBOOK, INC., V. WINDY CITY INNOVATIONS LLC
背景
Windy CityがFacebookに対して3つの特許に関する侵害を地裁で訴えました。Facebookは対応として、訴訟の対象になっている3つの特許のクレームのいくつかに対して決められた期間以内にIPRを申し立てます。Facebookがこの最初のIPRを始めた時点では、Windy Cityは訴訟においてFacebookが3つの特許のどのクレームを侵害していると主張しているのかを特定していませんでした。(ココ重要)
そして、Windy Cityがクレームを特定した時には、すでに35 U.S.C. § 315(b)で定められているIPRを申し立てできる1年間の期間が過ぎてしまっていました。そこで、Facebookは訴訟で特定されたクレームに対する2つの新しいIPR申し立てを行い、PTABに§ 315(c)に基づき、新規に申し出があった2つのIPRをすでにInstitutionされた最初のIPRにjoinderとして加え、3つのIPRを1つにまとめるようリクエストしました。
通常は新規の2つの申し立ては§ 315(b)により期限を過ぎてしまったので受け入れられないのですが、PTABはこの§ 315(c)に基づくJoinderを認め、最初のIPRでは対象になっていない新しいクレームを含めて審議を行い、その結果、後の申し立てに含まれていたクレームのいくつかがキャンセルされました。
上訴
この判決は上訴され、CAFCで争われた結果、CAFCはPTABが(1)Facebookを自身が以前のIPRに参加することを許したことと、(2)新しい特許クレームに対する挑戦を追加したこと、は間違っていたとしました。
CAFCは§ 315(c)は「人」を既存の手続きに参加させるためのルールであって、2つの別々の手続きを一緒にするものではないとしました。この解釈により、CAFCは§ 315(c)においては、同じ当事者のjoinderは認められないし、また、新しい問題の追加も認められないとしました。
この判決で、CAFCは不適切に加えられた新規のクレームをキャンセルしたPTABの最終判断を覆しました。
解説
この判例の教訓をまとめるとJoinderというルールを使って「時間は戻せない」ということです。IPRは特許訴訟の対応策として行われることがほとんどです。IPRがInstitutionされるとほとんどの場合で訴訟が一時停止します。そのため、無駄に訴訟を遅らせないために、訴訟の際にIPRを申し出る場合、1年間以内という期限があります。それが今回の判例で注目された35 U.S.C. § 315(b)です。
(b)Patent Owner’s Action.—
An inter partes review may not be instituted if the petition requesting the proceeding is filed more than 1 year after the date on which the petitioner, real party in interest, or privy of the petitioner is served with a complaint alleging infringement of the patent. The time limitation set forth in the preceding sentence shall not apply to a request for joinder under subsection (c).
35 U.S.C. § 315(b)
この期間制限の例外にあたるのが§ 315(c)に書かれているjoinderルールです。
(c)Joinder.—
If the Director institutes an inter partes review, the Director, in his or her discretion, may join as a party to that inter partes review any person who properly files a petition under section 311 that the Director, after receiving a preliminary response under section 313 or the expiration of the time for filing such a response, determines warrants the institution of an inter partes review under section 314.
35 U.S.C. § 315(c)
CAFCでは、§ 315(c)の条文に書かれている“any person”というところに注目して、今回のような2つの別々の手続きを一緒にするためには使えないという解釈を行いました。
つまり、とりあえず1年の期間以内にIPRを出しておいて、訴訟が進行していく中、新しいIPRを出してJoinderを使い、「時間を戻す」ことはできなくなります。
今回の判例からの教訓は、IPRの申し立てをおこなう場合、その時点で挑戦するべきクレームと主張を選ぶ重要性だと思います。「後出し」はできないので、その時点でinstitutionの判断を勝ち取れるよなクレームと主張を選ぶことが必要です。
まとめ作成者:野口剛史
元記事著者: Radhika K. Raman and Jeremy Anapol. Knobbe Martens(元記事を見る)