特許防衛団体と加入企業の関係でIPRが開始されず

今回の特許防衛団体であるPPXと加入企業であるSalesforceの関係は、単なる団体と加盟企業という枠を超えていたので、Salesforceが実質的利害関係者と認められ、315 条(b)によりIPRが開始されるべきではないという判決が下りました。しかし、この判例は通常の特許防衛団体とその加盟企業すべてに適用されるということではないので、個別の事実背景に基づいた判断が必要になってきます。

10月初め、PTAB は、RPX Corp. v. Applications In Internet Time, LLC の再送決定(remand decision )を下しました。この事件では、連邦巡回控訴裁がPTABに対して、RPXが提出した2件のIPR申請に対してSalesforceが実質的利害関係者(RPI。real party-in-interest)であるかどうかを、より「柔軟なアプローチ」(“flexible approach”)の下でさらに分析するよう指示していました。再審において、審査会は、Salesforce は RPI であり、したがって問題となっている申立書は、315 条(b)に基づいて提出期限が過ぎていると判断しました。

RPXにとって不利な事実が多かったので、この結果は驚くべきものではありませんが、RPI/privy の分析に変化があったかを考察します。

その結論を出すために、審査会は、以下の項目を検討しました。

  1. RPXの事業体としての性質を含む、RPXのビジネスモデル
  2. IPRに対するRPX自身の利害関係についての説明
  3. RPX が IPR 嘆願書を提出するかどうかを決定する際に、どのような状況下で、特定のクライアントの利益を考慮に入れているかどうか
  4. Salesforceと RPX の関係
  5. IPR に対するSalesforceの関心と利益
  6. RPX がその利益を代表していると言えるかどうか
  7. Salesforceが実際に特許の見直しを望んでいたかどうか
  8. Salesforce と RPX には取締役会メンバーが重複していたという事実の関連性、および
  9. RPXとSalesforce間のコミュニケーション

審査会は、(1つの要素で判断することなく)各要素を個別に分析しました。しかし、審査会の判断にとって最も重要な要素は、(1)RPXのビジネスモデル、(4)RPXとSalesforceの関係、(5)Salesforceが特定のIPRから直接利益を得ることであると考えられます。審査会の分析の結果、特に以下のような判断がなされました。

RPX は、これらの IPR 手続を申請する際に Salesforce の利益を代理していた。最も重要なことは、Salesforce は、Salesforce の特許訴訟リスクを軽減するために RPX に報酬を支払っており、RPX は、侵害責任を負う明白なリスクがないにもかかわらず、これらの IPR を提出していたこと。このような状況では、「衡平かつ現実的な考慮事項」は、RPX とそのメンバーがこれらの訴訟手続きにおいて共通の利益を共有していることを明確に示している。そうでないと判断すると、IPR申立人がRPXのような会員組織を通じて特許に異議を唱える機会を増やすことになり、RPXは会員に脅威を与える特許に対してIPRを開始することを期待して報酬を得ているため、法定の禁止事項や禁反言に関係なく特許に異議を唱えることができてしまう。だからといって、ある企業が他の企業に代わって、あるいは他の類似の企業に代わって、他の企業に請願書を提出させることで利益を得るような取り決めが許されないというわけではありません。しかし、そのような組織はすべてRPIとして名前を挙げて、適切な法定の期間限定と禁止措置が適用されるようにすべきである。

会員組織は、ある程度のレベルで共通の利益を確立することを主張することができるかもしれませんが、RPI はそれ以上のものを必要とします。この「それ以上のもの」は、今回の事件の特殊な事実(RPX への支払いのタイミング、法的なコミュニケーション、会社間の指導者の重複など)を見れば明らかで、RPIの指定がないことは 315(b)に基づく RPX の出願を絶望的なものにしたが、この判決は、この事件の特殊な事実を超えて読み取るべきではありません。つまり、他の会員組織が会員と何らかの形で親密な関係にあると主張されたとしても、IPRの申立では会員組織を実質的利害関係者として示す必要はありません。同様に、会員に対する既存の訴訟がない場合や、組織によるIPR申立書提出時に315(b)の範囲外となるような訴訟がない場合には、会員組織の会員の情報はPTABの業務とは無関係です。

PTAB審査会は今後のRPX申請を疑念を持って見るかもしれないが、今回の決定により会員組織のPTABへの異議申立を阻止できると考えるのは誤りです。

解説

RPXは会員制組織で、会員メンバーの特許訴訟リスクを軽減するようなサービスや活動を行っています。RPXのような団体は、特許防衛団体とも呼ばれていて、例えば、会員企業の関連する特許を互いに無償クロスライセンスする仕組みをとっていたり、NPE(Non-practicing entity)の攻撃から会員を守るため、あるメンバー企業がNPに特許を売却した際は、ほかのメンバー企業に売却される特許を自動的にライセンスするような形をとって、売却後に会員企業がNPEのターゲットにならないような仕組みを提供しているところもあります。特許防衛団体として有名な組織としては、RPXの他にOpen Invention Network(OIN)やLOT Networkなどがあります。

このような特許防衛団体は戦略的に会員にとって不利益な特許を無効化する手続きを行うことがあります。今回のRPXによるIPRも、そのような特許防衛団体の活動の一貫として行われました。

このような団体がIPRの申立を行い特許の再審査を求めることは認められています。しかし、IPRの申立を行う上で、315 条(b)に基づいて提出期限が存在します。

(b)Patent Owner’s Action.—

An inter partes review may not be instituted if the petition requesting the proceeding is filed more than 1 year after the date on which the petitioner, real party in interest, or privy of the petitioner is served with a complaint alleging infringement of the patent. The time limitation set forth in the preceding sentence shall not apply to a request for joinder under subsection (c).

このように特許訴訟に関連するIPRを起こす場合、訴状が送られてきてから1年間以内に行う必要があります。これには地裁とPTABで異なる判決が出るような状態を避けるため、地裁での訴訟を不用意に遅らせないため、そして司法・行政のリソースの有効活用のためと言った目的があります。

そして、この時間制限が課されるのは訴訟当事者だけでなく、real party in interest(実質的利害関係者)や privy of the petitionerにも課されます。

そこで、今回、特許訴訟で1年以上前に訴えられている当事者であるSalesforceとSalesforceが加盟しているRPXの間の関係に注目が集まりました。もしSalesforceがRPXのRPIであれば、315 条(b)が適用され、RPXによるIPRの申立は「時間切れ」でIPRが行われないということになります。

今回の事実的な背景を見たとき、RPXとSalesforceの関係は単なる特許防衛団体とそこに加盟する1つの会員組織という関係以上のものがあったと判断されました。

しかし、今回の判決がそのようなことになったからといって、今後すべての特許防衛団体とその加盟メンバーの間にprivityが存在する、または、加盟メンバーはすべてRPIであるというような一般化は決してできないことに注目するべきです。

今回のように、単なる「団体と会員メンバー」という関係以上のものがない限り、RPIになることはないので、今後特許防衛団体がこの判例を理由に弱体化する、メンバーが離脱するようなことはないと考えています。

しかし、特許防衛団体と特定の会員メンバーが明らかに「一定のライン」を超えた関係をもっていて、特定の会員メンバーが特許防衛団体を「操り人形」として、上記の315 条(b)を回避するような形で活用するような場合は、今回のRPXの判例が適用されることが考えられます。

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まとめ作成者:野口剛史

元記事著者:Scott A. McKeown. Ropes & Gray LLP(元記事を見る

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