スタートアップのための知財戦略(その1)

スタートアップを起業する場合、特許は大切です。特許は自社のコア技術を守るだけでなく、投資家がスタートアップに投資する際の重要な判断材料にもなります。今回はスタートアップがするべき知財戦略について5ポイントをまとめました。その2では、残りの6ポイントをシェアーします。

スタートアップで起業を考えているとき、起業したて、起業して資金を得る準備をしているとき、次の資金を得なければいけないとき。どのようなステージにあっても、スタートアップにとって知財戦略は大切です。特に、早い段階でカギとなる特許が得られれば、その分資金集めや優秀な人材を確保しやすくなるでしょう。

まず最初に、重要な市場と会社(と市場)の将来を考えます。この時点で、スタートアップの市場における技術的な強みを特定し、競合他社とその取り組みを理解します。このような市場情報を優秀な特許弁護士と共有できれば、その弁護士さんに特許明細書を書いてもらう際に、既存の市場でも将来の市場でも有効な特許を得られる可能性が高くなります。

特許出願予算をもつ。アメリカの特許庁への出願費用は約 $1600 per patent (lower for “small entities” and “micro entities”)程度ですが、弁護士費用が高いです。特許明細書を専門の特許弁護士に作成してもらうには $3,000 to $15,000 (depending on the complexity of the invention)かかる場合もあります。その他、出願後の特許庁の審査官とのやりとりなどにも弁護士費用が追加で発生します。このように費用が多くかかるので、特許出願予算をあらかじめ決めておくことは重要です。予算を持つことで、年間にどれくらいの数の特許を出すべきか、どのような発明を優先するべきか計画的に決めることができます。

ビジネスで重要な国を決める。特許は国別に認められている権利なので、アメリカの特許は原則としてアメリカでしか効力がありません。なので、ビジネスで重要な国が複数あるのなら、その国でも特許出願をおこなう必要があります。すべての国に出願するのは金銭的に難しいかもしれませんが、見込める需要が多いところに優先的に出願するなどの方針があるといいです。

発明を特定する。特許にできる可能性のある発明を特定するプロセスを確立することは大切です。発明があった場合、それを企業機密として社内で守るのか、特許として公開して権利にするのかを判断することも必要です。しかし、何が発明で、どの発明を特許として出願したらいいのかという判断は難しく、発明者や起業家だけではできません。効率的に適切な判断をするには、専門の特許弁護士に相談するのが一番です。なるべく早く相談すると、その分、出願する上での課題などが早く明らかになるので、あらかじめ協力してくれそうな特許弁護士を探しておくといいと思います。

発明者の特定。アメリカは発明者の特定に厳しく、発明者を間違えると最悪の場合、せっかく取った特許が無効になってしまいます。また、最近はITの進歩でコラボレーションがしやすくいろんな人とアイデアを共有できるようになりました。しかし、その分、発明があった場合の発明者の特定が難しくなってきているのも事実です。発明者の特定の面も、特許弁護士はサポートできるので、発明者がはっきりしないような発明があった場合は、なるべく早くその旨を担当弁護士に伝えてください。

この他にも、特許の期限を左右するイベントの特定、特許自体で収入を得る、特許を資産として扱う、政府資金を使った研究開発の注意点、規格、戦略の見直しなどのポイントがあります。残りの6ポイントの詳細は、スタートアップのための知財戦略(その2)を参照してください。

まとめ作成者:野口剛史

元記事著者:  Timothy Lohse and Brent K. Yamashita. DLA Piper  (元記事を見る



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