保険が知財訴訟費用を負担するか?今すぐチェック

今、企業が加入している保険がアメリカにおける知財訴訟もカバーしていると思っていませんか?多くの場合、知財問題が原因で起こる訴訟は「例外」扱いされるので、いますぐに保険の内容を確認することが必要です。

アメリカでは知財関連の訴訟が起こりやすい

営業機密の搾取などでは、数百万ドルに及ぶ賠償金を命じられることもすくなくありません。アメリカでは従業員の出入りが多く、共同開発なども多いので、元従業員や共同開発パートナーとの問題で、営業機密の流出が起こりやすい環境にあります。

また、Defend Trade Secrets Act of 2016により、営業機密の取締が連邦レベルでも行えるようになってきたので、知的財産をどのように守っていくべきなのか、より高度な戦略が必要な時代になっています。

訴訟は避けられない

知財の保護方法をより高度なレベルのものにしていくのは大切ですが、それでも訴訟は完全に回避できず、費用も多くかかります。そのため、そのような訴訟費用をまかなうために、保険に加入することを考えている企業もあるのではないでしょうか?

特許訴訟と保険

一般的に、保険を考慮する場合、いくつかのオプションがあります。1つは知財関連のクレームをカバーする特殊なポリシー。もう1つは、企業総合賠償責任保険(commercial general liability (CGL) policy)です。

しかし、実際に特定の保険が知的財産関連のクレームに適用されるかということを見極めるのは簡単ではなく、判例などを見ながら、詳しく調査していく必要があります。

事実が大切

一般的に、裁判所は一定の保険範囲を除外するときに使われる“arises out of”という文言を広く解釈する傾向にあります。

広く解釈し、訴訟案件が保険対象外の知財関連の訴訟となった判例には、以下のようなケースがあります。

  • Finn v National Union Fire Insurance Company of Pittsburgh (452 Mass. 690 (2008))
  • Lemko Corporation v Federal Insurance Company (70 F Supp 3d 905 (ND Ill 2014))
  • Sentinel Insurance Company LTD v Yorktown Industries (CIV 14-cv-4212, 2017 US Dist LEXIS 14439 (ND Ill Feb 2 2017))

判例の概要は、元記事に書かれているので参考にしてみてください。

このような判例を見てみると、裁判所が知財の例外を広く解釈していることがわかります。また、実際のクレームの名称が一見知財関連ではないようなものでも、事実によっては、知財関連だと見なされる可能性もあるので、保険の適用・非適用の判断においては、訴訟の事実背景が重要になってきます。

「例外」が適用されないケースもある

上記の判例とは反対に、知財問題に対する保険適用外という例外要項があっても、実際に保険ができようされるべきという判決をおこなったケースも以下のようなものがあります。

  • Hartford Fire Insurance Company v Vita Craft Corporation (911 F Supp 2d 1164 (D Kan 2012))
  • MedAssets Inc v Federal Insurance Company (705 F Supp 2d 1368 (ND Ga 2010))
  • Woodspring Hotels LLC v National Union Fire Insurance Co of Pittsburgh PA (CIV. N17C-09-274 EMD CCLD, 2018 Del Super LEXIS 186 (Del Super Ct May 2 2018))

判例の概要は、元記事に書かれているので参考にしてみてください。

このような判例を見てみると、裁判所は訴訟における申し立て内容を広く解釈し、申し立て内容に、保険が適用されない知財関係ではないクレームも含まれている場合、少なくとも、訴訟費用の一部を保険でまかなうように命じています。

詳細が大切

まとめると、保険の文言と訴訟のクレーム内容によって保険が適用されるか否かが決まっているのがわかると思います。このような判例を見てみると、一般的な企業総合賠償責任保険(commercial general liability (CGL) policy)に書かれている知財の例外は、企業機密侵害や他の知財侵害に適用されることが多く、よって、保険による訴訟費用の補填などは期待しない方がいいでしょう。特に、保険に明記されている例外例と事実が近い場合、保険が適用されることはないと言っていいでしょう。しかし、CGLであっても、訴訟が知財以外の問題にも波及する場合、保険が(一部)適用される場合もあります。

まとめ

最終的には、CGLや他の保険を買う場合、保険の文言を慎重に検討し、知的財産に関する訴訟に対するカバレッジに不安がある場合は、知的財産用の追加保険を検討するのもいいでしょう。

まとめ作成者:野口剛史

元記事著者:IAM (元記事を見る

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

追加記事

特許において、クレームの限定事項が明確に記述されているかどうかは、特許の有効性を左右する重要な要素です。今回、Maxell, Ltd.対Amperex Technology Limitedの判決は、特許クレームの解釈において、限定事項間の表面上の矛盾をどのように扱うべきかという問題を浮き彫りにしました。本文では、この重要な判決を深堀りし、一見矛盾すると思われる限定事項が、実際には特許の不明瞭性(Indefiniteness)を生じさせない理由について探求します。特に、連邦巡回控訴裁判所(CAFC)がどのようにこれらの限定事項を同時に満たすことが可能であると見做したか、その解釈の根拠と、特許クレームを起草する際の実務上の教訓に焦点を当てて考察します。
特許法における「組み合わせの動機」(Motivation to Combin)の概念は、発明が発明された時点でその分野の通常の技術者(PHOSITA)にとって自明であったかどうかを判断する上で不可欠な要素です。自明性の問題は、新しい発明が既知の技術要素の単純な組み合わせに過ぎないのか、それとも特許に値する独自の技術的進歩を表しているのかを区別するために重要です。このブログ記事では、特許請求の自明性を評価する際に中心となる「組み合わせの動機」の概念と最高裁判決であるKSR判例を解説し、Virtek Vision 対 Assembly Guidance Systemsの事件を例に、実際の訴訟におけるこの概念の適用方法について掘り下げます。
先月、米国特許商標庁(USPTO)が「Means-Plus-Function」に関するメモランダムを発行し、審査官に最新ガイダンスを提供しました。その内容は実務における大きな変更を意味するものではなく、既存の法的枠組みの下でより明確な指針を提供することを目的としています。しかし、このタイミングにおけるガイドラインの発行は、35U.S.C.112条(f)に基づく一風変わったクレームの形式であるMeans-Plus-FunctionがUSPTOにおける特許審査で注目されていることを示しており、改めてガイドラインに沿った適切なクレームドラフティングが求められることを意味します。