アンケート調査から見えてくる最新の知財運営のトレンド

日々の国際的な知的財産運営はどのような知財戦略においても重要なことがらです。知的財産が会社の価値に大きく関わる今日、特許や他の知財関連の権利の取得や維持に対してのポリシーは重要な役割を果たします。今回のアンケート調査で、知財情報を提供しているClarivate Analytics社は、どのように企業が知財運営を行っているのか、また、どのような問題を抱えているのかを調べました。

7月、Clarivate Analytics社は、“2018 IP Operations Trends Survey”を発表。このレポートで、2018年のはじめにアンケート調査した知財運営の結果報告をしました。このレポートでは、主に以下の3点について重点的に調査をしています。知財運営チームとプロセス、バックログとリスク、企業の様々なプロセスやリスク管理を考えた上での知財予算。

150以上の回答

アンケート調査は2018年2月から3月にかけて行われ、150以上の回答が得られました。回答組織の内訳は、さまざまな規模で異なる業界の企業と特許事務所です。弁護士、弁理士、パラリーガル、知的財産管理者からの回答もさることながら、R&D部門や会社の上層部からの回答も多かったとのことでした。このような回答層から、ビジネス全体においての知財の重要さが目に見えてわかります。

多くの組織で複数の拠点から知財運営を行っている

多くの組織は、知財運営の拠点は1つから3つでした。しかし、場合によっては、10箇所以上の拠点が知財運営に関わっている組織もありました。このように、物理的に複数の拠点において知財を運営する場合、問題が発生することがあります。

複数の拠点で知財運営を行っている場合、よく起こることは、複数のチームによって、多数のプロセスが存在するため、活動するにあたって混乱を生むということです。人によって同じ案件でも行動が異なってしまうと、効率が損なわれ、リスクも上昇します。このように複数の拠点で知財運営を行う場合、すべての人が従えるマスタープランが必要になるでしょう。

このようなことを言うのは簡単ですが、実際に実行しようとすると難しいです。特に、合併などから知的財産部が2つ存在する形になった場合、1つのポリシーで運営することは困難です。しかし、既存のルールを合わせ、決断し、無駄を省き、より効率のいい仕組みをつくることは大切な取り組みです。このような取り組みは、時間とお金を要します。しかし、一度統合を行うと、カンで仕事をすることがなくなり、効率よく働け、リスクの低下にも貢献します。このような効果を得るには、オープンで明確なコミュニケーションです。

手続きの不透明さと便利な機能の活用率の低さがトップの課題

アンケート調査では、一般化しているマニュアル本が少なかったり、品質保証や、仕組みの不具合から提出期限を過ぎてしまうなどのトラブルに負われたことを問題視する声も上がっています。特に、明確なプロセスが存在しないという意見がR&D部門や知財管理者から多く、機能の活用率の低さは弁護士、ITや上層部が多く指摘していました。

特に、R&D部門が明確なプロセスが存在しないというところは、発明があっても、知財として把握できていない場合があります。

また、知財を運営・管理するIP management softwareは高く、運用するにも大掛かりになるケースもあります。しかし、これは他のアプリやソフトでも同じですが、使用ソフトの特性をよく理解し、便利な機能を最大限まで使っている組織はほとんどありません。また、便利な機能があっても、学ぶ機会を逃し、今までやっていた非効率な方法でソフトを運用している場合も多くあります。特に、時間が限られているスタッフがIP management softwareを管理している場合、便利な機能がすでに備わっていても、使われておらず、知財運営の効率化がはかれないという事態に陥りかねません。このような無駄を回避するためにも、使っているIP management softwareに対するトレーニング等の時間を定期的に確保することをおすすめします。

バックログの管理はうまく行っているところとそうでもないところがある

明確なプロセスがあり、そのプロセスのもと活動が行われていて、便利な機能も十分使われていれば、知財運営の効率は高まります。しかし、アンケート結果では、バックログの管理はうまく行っているところとそうでもないところがあるということがわかりました。いくつかの分野では、バックログはコントロールできているという回答が得られたものの、他のエリア(例えば、譲渡や校正など)では、多くのバックログが存在しているようです。このような状況は、優先順位や重要度、リスク管理によるものだと考えられます。例えば、譲渡関連のバックログは、合併などが行われたときに発生します。知財の名義変更等は、合併後に行えるものですが、他の案件を行って、時間が過ぎ、そのままになっている、なども考えられます。しかし、知財の運営をするための情報をIP management softwareに入力する作業に遅れが出たり、IDS書類作成に遅れが出ると、後々の知財リスクが高まってしまうので、適切な優先順のもと、日頃の知財活動を行っていく必要があります。

期限を逃す、期限を逃しそうになることが課題

知財を管理するにあたって、期限を監視・管理していくことは重要なことです。また、この問題は長年、知財に携わる人の心配事の1つです。アンケート結果では、期限を逃すことは稀だという結果でしたが、重要な知財に対して、期限を1つでも逃してしまうと、致命傷になりかねません。この対策には、明確なスタンダードのプロセスがあり、詳細なデータ入力と入力されたデータをチェックする機能が大切です。継続してデータベースを維持していくことも大切ですが、ルールやビジネスの優先順位が変わるたびに、その変化に適応していかなければなりません。また、期限を逃しそうになることがあることも事実ですが、そのようなことが起こった時は、原因を解明し、管理プロセスを向上するチャンスにもなります。

知財の予算の出処は業界ごとに異なる

アンケート結果で、知財の予算の出処は業界ごとに異なることがわかりました。例えば、基礎科学や農業化学の業界ではR&D部門が知財の予算を持っているところが多いとのことです。また、テク、テレコム業界でもそのようなトレンドが近年あります。しかし、エネルギー、工業業界や、小売業では、法務が知財の予算を持っているところが多いとのことです。

知財の予算が法務や知的財産部から出ている場合、成果は出願活動、特許数、権利行使数、渉外対応などの結果だとトップマネジメントに報告されることが多いです。しかし、研究開発部門が知財の予算を持っている場合、知財チームの存在価値や研究開発への貢献という形で成果が報告される場合が多いとのことです。どちらにしても、知財の評価はビジネスと直結してるところで行われる場合が多いので、日々の知財活動と成果を事業への貢献度と関連させて説明する必要があります。

まとめ

知財運営チームにとって、日々の知財の運営と管理をしっかりと定義し、文章化し、コミュニケーションをとっていくことは大切な役割の1つです。少人数で多くのことを任されていく傾向があるので、適切なツールの機能を使った効率化・自動化が求められています。しかし、品質は維持していくことが大切で、現状維持だけでなく、将来のニーズなどに対して事前に投資、準備していく必要があります。

バックログとリスク管理は、アンケート結果によると、分野によってさまざまなです。ここでは、向上の余地が多くあるので、上手にバックログを管理できている組織から取り組みの方法を学ぶのもいいでしょう。特に、仕事量が増えていっている担当者が関わる仕事にはバックログの危険性があるので、うまくサポートすることが求められます。

知財の予算ですが、どこが予算権を持っているかによって、知財活動の評価視点が変わってきます。しかし、どこが予算権を持っていても、知財活動の評価はビジネスに直結したものが求められる傾向があるので、日々の知財活動とビジネスへの貢献度を結びつけて成果を報告する必要があります。

元記事は、 Clarivate Analytics社が公開している2018 IP Operations Trends Surveyを元に作成されました。

まとめ作成者:野口剛史

元記事著者:Jacob Schindler. IAM (元記事を見る

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野口 剛史

特許デマンドレター規制法案

2018年7月13日、Michael Burgess議員が、特許デマンドレターを規制する法案(the Targeting Rogue and Opaque Letters (“TROL”) Act (H.R. 6370))を提出しました。この新しいTROL Actでは、悪質な特許関連のデマンドレターに対する規制を設けています。簡単に言うと、このTROL Actが成立すれば、米国連邦取引委員会(Federal Trade Commission (FTC))が悪質な特許デマンドレターを送っている組織に対して訴訟を起こすことができるようになります。

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