地裁において、他社の特許を無視するという社内ポリシーは特許の故意侵害を証明するのに十分な証拠であるという判決が下りました。特許を故意に侵害したとされた場合、3倍賠償や弁護士費用の負担など大きな金銭的なリスクを負うことになります。
経緯
Motiva Patents, LLC v. HTC Corporationにおいて、Motiva PatentsはHTCのVive virtual reality systemが自社の特許を故意に侵害していると主張。
しかし、HTCは故意侵害の反論として、Motiva Patentsの技術は知らなかったと主張。その証拠として、HTCは社内のポリシーにおいて他社の特許を意図的に見ないようにし、従業員にもそのポリシーに応じて他社の特許を見ないよう指示していたことを示しました。しかし、このHTCの主張が裏目に出ます。
この裁判がおこなわれたThe US District for the Eastern Court of Texas はHTCのポリシーを逆手にとり、HTCが故意侵害をしている証拠だと結論づけました。故意に盲目になるということは、必然的に競合の特許を知りつつ、侵害しているということと同等なため、HTCの特許を意図的に無視するポリシーそのものが、特許の故意侵害を証明するのに十分な証拠であるとしました。
教訓
故意に競合他社の特許を無視するようなポリシーは、故意侵害を証明するのに十分な証拠になってしまう可能性があります。そのようなポリシーのもと他社の特許を「知らなかった」と言うことは、故意侵害に対する有効な反論にはなりません。逆に、故意侵害を認めてしまうことにもなりかねないので、他社特許に関しては必要に応じてレビューをしていく必要があります。
まとめ作成者:野口剛史
元記事著者:Kristin Lamb, Mark D. Shelley II and Jeffrey S. Whittle. Womble Bond Dickinson (US) LLP(元記事を見る)
2件のフィードバック
「他社の特許を意図的に見ないように」という会社のポリシーは、乱暴に思えましたが、他社特許を参考に自社開発をしていない、という主張では理があるようにも思えます。それでも、他社製品を分解して参考にしているでしょうから、裁判所は、特許公報を見ていないということだけで故意侵害は免れないという考えなんでしょう。特許保護を進める判決としては重要でしょうね。勉強になりました(感謝)。
お役に立てて何よりです。
今回の判例は「他社の特許を意図的に見ない」という極端すぎる会社のポリシーはダメということを示したものだと思います。しかし、Discoveryのリスクなどからエンジニアだけで他社特許を見るのはよくないので、他社特許を分析する場合は、特許弁護士が入ってAttorney-Client Privilegeで保護されるようにした方がいいですね。