自明性の反論で用いられる二次的考慮事項は証拠に照らし合わせた適切な判断が求められる

特許の自明性が指摘された際に、二次的考慮事項(Secondary Considerations)を主張することで特許の非自明性を示すことができます。今回の判例ではCAFCが、コピー、業界からの賞賛、商業的成功、長年の未解決問題の解決など、二次的考慮事項で反論する上で特に重要になる項目に関して言及しています。特に証拠に基づいた評価が強調されており、二次的考慮事項の反論における証拠の重要性を物語っています。

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判例:Volvo Penta of the Ams. LLC v. Brunswick Corp., Case No. 22-1765

2023年8月24日、米国連邦巡回控訴裁判所(CAFC)は、Volvo Penta of the Ams. LLC v. Brunswick Corp., Case No. 22-1765において、米国特許第9,630,692号(以下「’962特許」)の全クレームを自明として特許不成立とした特許審判部(PTAB)の最終書面決定を取り消しました。CAFCは、審決が十分に考慮しなかった非自明性の客観的指標をさらに評価するため、審決を差し戻しました。その際、CAFCは、必要とされる自明性の分析および様々な指標の検討について、必要な指針を示しました。

特許でカバーされた製品の成功と競合製品とIPR

‘962特許は、ボートの船尾の下に配置される「プル型」または「前方向ドライブ」を提供するように設計されたボート・ドライブに関するものです。Volvo Pentaの’962特許の商業的な実施形態は、その「前方向ドライブ」システムと呼ばれ、ウォータースポーツにとってより安全であることもあり、2015年に発売されて「非常に成功」していました。そして、Brunswickはその5年後、「Bravo Four S」ドライブと呼ばれる独自のボート・ドライブ・システムを発売しました。

Brunswickは、Bravo Four Sドライブを発売した同じ日に、2つの文献から見てすべてのクレームが自明であると主張し、’962特許の当事者間審査(inter partes review、IPR)を申請しました。用いられた文献は、 Kiekhaeferに対する米国特許2,616,387号(「Kiekhaefer」)とBrandtに対する米国特許4,840,136号(「Brandt」)です。これに対し、Volvo Pentaは、主にKiekhaeferとBrandtを組み合わせる動機に異議を唱え、一方、非自明性の二次的考慮事項として、6つの客観的指標(コピー、業界からの賞賛、商業的成功、懐疑論、他者の失敗、長年感じていたが未解決の必要性)の証拠を提出しました。

二次的考慮事項は証拠に照らし合わせて評価するべき

CAFCはまず、Volvo Pentaが、「異議申立の各請求項に記載された操舵可能なトラクター型駆動装置」がフォワード・ドライブの成功の原動力であり、「プロペラの配置と操舵軸の位置の発明的な組み合わせが、業界で称賛され、先行技術の駆動装置では達成できなかった特定の利点を提供した」ことを証明することにより、製品と特許の必要な関連性を立証したと判断しました。

コピーは非自明性の強力な証拠

次に、CAFCは、フォワード・ドライブと’962号特許の争点となったクレームとの間に関連性があると判断した上で、「異なる考慮事項への重み付けを含め、この非自明性の客観的指標に関するPTABの分析は、過度に曖昧である」と結論づけました。 例えば、フォワード・ドライブの意図的なコピーを証明するBrunswickの内部文書の重要性を認識し、「コピーを認めたにもかかわらず、PTABはこの要素に『ある程度の重み付け』を与えたに過ぎないと非難しました。CAFCは、一般的に「コピーは非自明性の強力な証拠」であり、「他者が問題を解決できず、コピーすることは、多くの場合、非自明性の最も有力で説得力のある証拠となり得る」と説明する判例に照らして、この「『若干の重み付け』のみの付与」は不十分であるとしました。

反論されなかった業界からの賞賛、商業的成功の事実

続いて、CAFCは、Volvo Pentaの商業的成功に関する証拠を評価します。Brunswickが「フォワード・ドライブは、本質的に船尾駆動装置の新しい市場を創出した」、「『フォワード・ドライブの売上は、2015年の発売以来大幅に増加した』」、「より多くのボートビルダーが、フォワード・ドライブを組み込むために特別に設計されたボートを含め、Volvo Pentaのフォワード・ドライブを純正装備として提供している」ことを認め、実際にこの事実について争わなかったことをCAFCは評価しました。しかし、PTABはこの要素を「ある程度重視する」としは評価しておらず、過小評価していたので、PTABの決定は、実質的な証拠に裏付けられていないと非難しました。

一部の技術を保有していたにも関わらず開発できなかった当事者

CAFCはまた、PTABは、長年にわたって感じられながらも解決されていない必要性を適切に評価しなかったと判断しました。例えば、PTABが「1950年代に最初のサーファーがボートの航跡の後ろに 10人ぶら下がることができることを発見して以来、人々はそれをより良く……より安全に行う方法を見つけ出そうとしてきた」、「船内のVドライブメーカーは、そのプロップが船体の下 に安全に収納されており、(ウェイクサーフィン)市場にサービスを提供することを楽しんでいたが、スターンドライブメーカーはそうできなかった」という証拠を無視したとCAFCは判断しました。CAFCは、この証拠が「スターンドライブボートでの安全なウェイクサーフィンという長年のニーズを明白に示している」と判示しました。CAFCはまた、主張された先行技術であるBrandt(1989年頃、Volvo Pentaに譲渡)とKiekhaefer(1952年頃、Brunswickに譲渡)の古さを指摘する一方で、「Brunswick自身は、主張された文献の1つを50年近く所有していたにもかかわらず、クレームされた発明を開発しなかった」という事実を見過ごすべきでないと指摘しました。

証拠に裏付けられた二次的考慮事項の総合的な評価

最後に、CAFCは、客観的指標全体に対する審査会の最終的な評価には欠陥があり、 実質的な証拠に裏付けられていないと判断しました。CAFCは、PTABが各要因を個別に評価し、「ある程度の重み付け」をすることは不十分であるとし、「各要因の合計が、説明なしに、『非自明性にやや有利である』と言う以外には、全く議論していないことを非難しました。

まとめ

全体として、CAFCの見解は、新たな指針を提供し、審判官は証拠に密接に関与し、二次的考慮事項の客観的指標の重み付けについて十分に理由付けされた説明を提供しなければならないことを明確にしました。また、特許権者に対し、IPRやその他の訴訟において、客観的証拠を単に結論めいた形で説明するのではなく、思慮深く、徹底的に説明するよう促すものでもあります。

本判決の事実関係の下では、Volvo Penta社がこのような説得力のある証拠を提示していなければ、審査会の結論が実質的な証拠の裏付けを欠くとする根拠はなかったかもしれません。

参考記事:Federal Circuit Clarifies That Secondary Considerations Must Be Considered Both Individually And As A Whole In An Obviousness Analysis

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