自社製品に関わる特許は何件必要か?

この答えは当然のことならが製品の商業的価値によります。しかし、その逆、つまり守る特許が多いほど商品の商業的価値が高いということも成立します。この特許と製品の関係は高額な医薬品に顕著に表れています。

一般的に薬は高く、薬に対する特許保護は批判を受けます。この傾向は特にアメリカで顕著です。最新の調査によれば、アメリカで最も売れている12個の薬に対して、1つあたり平均125件の特許出願があり、71件の特許で守られているとのことでした。

その影響からか、2012年に比べ、そのような薬の値段は平均で68%も上昇しています。例えば、Humiraという最も売れている薬には、 247件の特許出願があり、132件の特許で守られています。その薬の売り上げは、世界中で$18B (2017年)もあり、2012年と比べ144%も値段が上昇しています。

ここで注目すべき点は、Humiraの主要成分に関わる特許は2016年に権利が満了しています。しかし、製法特許やプロセス特許の影響でより安価なGeneric dragが作れない状態になっています。

Humiraもふくめ生物学的な薬全般の模倣品を作るのはそれほど難しくありません。しかし、一般的な科学的な薬と違い、生物学的な薬はより高度な製造過程と品質管理が求められます。そのため、製薬会社は、生産に関わるすべての点において特許出願を行う傾向にあります。

単純にその数により、競合他社が競合製品を出すコストが上がります。1つ1つの特許の質に関わらず、関連する特許を1つ1つ分析・評価為ていくのは時間とお金がかかる作業です。また、特許を無効にしやすい現状であっても、費用は特許の数やクレームの数に比例します。

まとめ

今回はもっとも特許保護が重要な医薬品を例にとりましたが、その他の業界でも同じことです。自社製品すべてに多くの特許を出願することは難しいですが、特に重要な製品の場合、製品の特徴だけにとどまらず、製法など様々な面について幅広く出願をし、数の力で圧倒するという戦略も場合によってはとても有効です。

まとめ作成者:野口剛史

元記事著者:Xiaohong Liu. McKee Voorhees & Sease PLC(元記事を見る

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