過去の販売の非開示が隠蔽とみなされ特許が無効に

Total Rebuild, Inc. v. PHC Fluid Power, LLC, Case No. 6:15-CV-1855 (W.D. La. Oct. 15, 2019)において、地裁は不正行為(inequitable conduct)のため特許を無効にしました。発明者が出願時に特許庁に過去の販売に関する情報を提供していなかったことと、訴訟における不適切な対応から意図的に情報を隠蔽したと結論づけられました。

不正行為で特許は無効に

不正行為があったと見なされた場合、その代償は大きいです。不正行為が一部のクレームに関した事柄であっても、特許に書かれているすべてのクレームが無効になります。

情報の開示義務を怠った

発明者は特許庁に重要な情報(material information)について開示する義務があるにもかかわらず、出願から1年以上前におこなわれた発明に関わる売り出しの事実について、特許庁に開示していませんでした。

地裁は、出願から1年以上前に売り出された製品は、35 U.S.C. § 102(b)のもと先行例であることを示し、また、訴訟の対象になっている特許のクレーム1と16の特許性について重要な情報であり、出願中に開示されていれば、クレーム1と16は権利化されていなかったであろうと述べました。

非開示は意図的だった

次に、地裁は売り出しに関わる情報の非開示は意図的だったのかについて審議しました。その中で、地裁は、発明者が特許庁に重要な情報を開示する義務と、販売の有無を開示する義務について知らされていたことに注目。しかし、販売の実績を開示してしまうと発明を権利化できないことを知った発明者は、代理人に過去の販売について開示をおこないませんでした。

地裁は、このような行為は、発明者が意図的に販売の情報を隠蔽したとして、非開示は意図的だったと結論づけました。

訴訟における不適切な対応からも隠蔽が意図的だと判断

最後に、訴訟でも出願から1年以上前におこなわれた発明に関わる売り出しの事実をかくしていたので、そのような不適切な対応からも隠蔽が意図的だという判断を下しました。

たとえば、申立人であるTotalは、ディスカバリーにおける重要な先行例の情報の開示を拒み、強制的に開示を命令されるまで情報の開示を拒んでいました。そのような対応を重く見て、地裁は情報の隠蔽については意図的だったという推論を提示しました。

まとめ

何らかの手違いで過去の販売を特許庁に開示せずに権利化することはあるかもしれませんが、そのような時でもその事実を隠蔽するような行為は、不正行為と見なされてしまうので、速やかに開示しましょう。その事実を隠してしまうと、今回の申立人のように不正行為により特許が無効になってしまいます。

まとめ作成者:野口剛史

元記事著者:Stanley M. Gibson. Jeffer Mangels Butler & Mitchell LLP(元記事を見る

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