2019年1月25日に、35日間というアメリカの歴史上最も長いGovernment Shutdownが終わりました。今後もGovernment Shutdownは起きることが予想されるので、今回の出来事から今後の知財戦略についての教訓をいくつか紹介します。
USPTOの運営
まずその前にUSPTOの運営がどのようになっているか簡単に説明します。
USPTOは支払われる費用でまかなわれている政府機関です。運営に関わる出費は原則支払われる費用でまかなわれていますが、支払われた費用を自由に使うことはできません。その理由は、議会において、支払われた費用の使用金額限度が定められているため、議会の了承なくUSPTOが使える金額には制限がかけられているからです。
このように議会による制限と頻繁におこるGovernment Shutdownを背景に、USPTOは運営形態を変更し、Government Shutdownが起こったときでも継続して運営できるような体制になりました。
実際には議会で認められた運営費用を“Operating Reserve”といういわゆる預金口座に置いて、そこから必要経費を支払っていく形になっています。このような体制になったことで、Government Shutdownが起こったときでも、“Operating Reserve”から運用費用を支払い続けることができます。
しかし、このような運営体制でもUSPTOはGovernment Shutdown後の手続き費用にアクセスできず、Government Shutdownが長期化するとUSPTOも運営に滞りが生じる場合があります。
教訓
このUSPTOの運営形態を元に、今後もあるであろうGovernment Shutdownに対する今後の知財戦略についての教訓を紹介します。
通常通り手続きをおこなう
上記でも説明したようにGovernment ShutdownがあってもUSPTOはある程度の期間、通常運営をおこなえる状態にあります。なので、Government Shutdownが起きたからといってすぐに出願ができなくなるようなことはありません。なので、Government Shutdownがおきても、通常通り業務をおこない、期限までに必要書類などを提出する必要があります。
ただ、Government Shutdownが長期化すると電子出願システムなどがうまく機能しない可能性もあるので、郵送による出願や書類提出などの代替案も準備しておいた方がいいでしょう。
資金が尽きた場合、USPTOの後れが懸念される
Government Shutdownが長期化し、USPTOの資金がなくなった場合、審査等の後れが懸念されます。Government Shutdownにより出願期限やOA対応期限が延期されるといことはまず考えられませんが、その影響により審査官の給与が払えない場合、審査の遅れなどが出てくることが考えられます。
裁判所も並行して見る
特許訴訟等と並行してIPRをおこなっている場合、USPTOだけでなく裁判所の運営状況も確認して、それに応じた対策を考える必要があります。今回のGovernment Shutdownの間、裁判所は通常運営をしていましたが、今後Government Shutdownが長期化すると裁判所の運営も滞るところがでてくるかもしれません。裁判所の手続きがGovernment Shutdownで滞った場合、USPTOでの手続きにどう影響するのか、また戦略全体にどのような影響をおよぼすのかを考える必要があります。
今後の動き
このようにGovernment Shutdownが長期化すればUSPTOの運営も滞る可能性があるので、今回の件を教訓に、USPTOの“Operating Reserve”を拡大する等の対策議論が活発になってくると思われます。もしそのような対策が採用されればGovernment Shutdownにおける知財戦略への影響が少なくなることが期待されます。
まとめ作成者:野口剛史
元記事著者: Shaton C. Menzie. Womble Bond Dickinson (US) LLP(元記事を見る)