診断方法に関する特許を取るための実務戦略

自然法則を観察するだけの診断方法は特許適格性がなく、特許として成立するには、何らかの「一般的ではない」(”unconventional”)または、「ルーティンでない」 (”non-routine”)ステップが必要になります。このようなはっきりしない条件があるため、検査方法に関する権利化と権利行使は予測できない困難なものになっています。

最高裁が沈黙したまま

2011年のMayo判決という最高裁における判例以降、最高裁はこの診断方法に関する特許適格性に関わる案件をつり扱っていません。2020年1月には最高裁は8つもの特許適格性に関する上訴を却下しています。そのため、診断方法の特許適格性については明確化されておらず、診断方法の特許を扱う際は、「一般的ではない」(”unconventional”)または、「ルーティンでない」 (”non-routine”)ステップを強調する必要があります。

今できる実務的な戦略

このように特許適格性に関する基準が依然として不透明な状態ですが、出願は遅らせることが出来ないので、現時点で出願する際に気をつける点をいくつか紹介します。

  • 診断方法に関するクレーム内では、自然物 (Natural products)と疾患の状態(Disease states)の関係よりも、行動(Action)を重視するべき
  • 診断方法をなるべく詳しく説明する
  • 診断方法そのものではなく、それに使われる技術やシステムに注目する
  • 記載されているステップ(の一部)を一般的(conventional)または、ルーティン( routine)と記載しない
  • アメリカ以外の国での権利化も考慮する

CAFCが最高裁のガイドラインを求めるも。。。

Athena Diagnostics Inc. v. Mayo Collaborative Services, LLC, 915 F.3d 743 (Fed. Cir. 2019), において、Majority派も反対意見派のCAFCの判事も最高裁によるより明確な基準を求めています。このような発言をCAFCの判事がするのは珍しく、診断方法に関する特許適格性に関する問題の深刻さを物語っています。

しかし、最高裁はこのAthena事件の上訴を却下します。このことにより、残りの7つの特許適格性に関するレビューも却下されたことになったので、現時点では、このような現場での混乱にも関わらず、最高裁は明確な線引きやさらなるガイドラインを提供することに関心がないようです。

特許庁での対応

特許庁でもこの問題に対する取り組みが行われています。最近だと、2019 Revised Patent Subject Matter Eligibility Guidance によって、特許として成立しない判例上の例外( judicial exception)を示すだけのクレームとより狭い、または、明確なクレームの差別化を行っています。このガイドラインにより、特許庁は診断方法の特許適格性を判断するにあたって、2つのステップで判断することを考えました。最初にまずクレームが判例上の例外に該当するかを判断し、次に、判例上の例外を実用化するレベルの追加要項の記載はあるかを見ます。

このガイドラインは、特許庁による診断方法に対する101の拒絶を覆すのには有益ですが、CAFCによる最高裁判決の解釈を参考に見てみると、このガイドラインが判例に沿ったものなのかは微妙なところです。

また、訴訟の場合、裁判所は特許庁によるこのようなガイドラインに敬意をしめさないので、訴訟ではあまり役には立ちません。

対策

診断方法に関する特許を取り扱う場合、上記の戦略の箇所で説明されたポイントを考慮して対応していく必要があります。

診断方法には「一般的ではない」(”unconventional”)または、「ルーティンでない」 (”non-routine”)ステップが必要になるので、明細書、審査中の発言、訴訟などで、クレームに記載されているステップは一般的なものだというような発言は避けた方がいいでしょう。

また、診断方法を広く一般化された言葉でクレームしたり、自然物の認識だけにとどまるクレームは避けるべきです。また、広い範囲をカバーする独立クレームに関するサポートとより狭い限定されたことがらに対する従属クレームのサポートは別々に用意するなどの工夫もいいと思います。

さらに、診断方法に限らず、それに関わる構成(Compositions)、製品、機器などもクレームすることで、診断方法に関わる技術やシステムを特許化することができます。

最後に、アメリカでは診断方法に関する特許の取得や権利行使は難しいですが、アメリカ以外の国ではより広い権利がとれるかも知れません。そのような国での需要が十分見込めるのであれば、アメリカ国外での出願も検討するべきです。

解説

アメリカでは診断方法特許の取り扱いが非常に厳しい状況です。しかし、診断という分野はとても大きな市場です。特定の癌の診断やDNA解析、今で言うと新型コロナウイルスの診断など、需要は多く、それに伴い大きな市場が存在します。

そこで、診断方法の特許を取得して、競合他社との差別化を行いたいところですが、アメリカでは判例が不透明すぎて、診断方法特許の権利化や権利行使を行ったときにどのような判断がされるのかが全くわからない状況です。

その中でも、今回は5つほどの実務で活かせるポイントが紹介されていたので、アメリカでは診断方法特許を扱う案件がある場合はとても参考になることでしょう。

また、今回は診断方法に関する特許適格性の問題でしたが、この問題はソフトウェア関連の特許の特許適格性にも関連するところがあります。ソフトウェア関連の特許適格性はAlice判決直後は大きな混乱があったものの、最近では整備されてきました。

技術的な内容は医療とソフトウェアと大きく異なりますが、特許適格性という特許法101条に関わる問題という点では同じなので、法律的な考え方は似てくるのではないかと思っています。この部分に関して研究してみるのも面白いかも知れません。

まとめ作成者:野口剛史

元記事著者: Tolga S. Gulmen. Quarles & Brady LLP(元記事を見る

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