アメリカではデザイン特許が注目を集めて久しいですが、出願中にデザイン特許のタイトル補正をしてしまうと意図していないクレーム範囲の限定が行われてしまうことがあります。
背景
Curver はデザイン特許を出願しますが、“Y”-shapeのパターンのみが開示されていて、そのパターンを使う家具が示されていませんでした。審査官は最終的にデザイン特許を許可しましたが、タイトルが曖昧過ぎ、デザインが使用される特定のものが指定されていない(MPEP § 1503(I))ということで、タイトルをPattern for a Chairに変更することを示唆します。最終的に、Curver は審査官の提案に従いタイトルを変更し、その変更に合わせ、明細書とクレームにも補正を加えました。
デザイン特許が成立した後、Curver はHome Expressionsをデザイン特許の侵害で訴えます。侵害の対象として取り上げられたものはHome Expressionsのバスケットでした。しかし、地裁では、デザイン特許のタイトルが椅子に限定されていたので、Home Expressionsのバスケットは侵害していないという判決を下し、それを不服としたCurver がCAFCに控訴します。
デザイン特許のタイトルはクレーム範囲を限定する場合がある
Curver Luxembourg, SARL, v. Home Expressions, Inc., 2018-2214 (Fed. Cir. Sept. 12, 2019) において、CAFCは、出願時に行われたタイトルとクレームの補正により、デザイン特許のクレームスコープが限定されたとしました。
今回の判決で、デザイン特許の図でデザインが応用されるモノが開示されていない場合、タイトルやクレーム文言などに使われている言葉がクレームの範囲を限定する可能性があることがわかりました。
教訓
- 広すぎるタイトルをデザイン特許のタイトルに使わない。審査官がタイトルの補正を促しても補正には慎重に対応すること。
- デザイン特許の出願時に、デザインが使われる対象物を明確に示しておくこと。デザインや保護の対象物によっては、複数のデザイン特許を出願する必要もある。
まとめ作成者:野口剛史
元記事著者: Elizabeth D. Ferrill and Adriana L. Burgy. Finnegan, Henderson, Farabow, Garrett & Dunner LLP (元記事を見る)