デザイン特許におけるProsecution History Estoppelの適用

通常特許における出願履歴によるクレーム範囲の限定(Prosecution History Estoppel)は知っている方も多いと思いますが、デサイン特許におけるProsecution History Estoppelはどうでしょうか?

出願履歴によるクレーム範囲の限定(Prosecution History Estoppel)とは?

特許の審査中のクレーム補正や主張など、出願人が起こした行動や言動によって、権利化されたクレームの範囲が限定されてしまうこと。権利化される際には見落とされがちですが、いざ権利行使する際に、問題になる場合があります。

デサイン特許におけるProsecution History Estoppelの適用

デザイン特許においてもProsecution History Estoppelが適用される場合がありますが適用基準がはっきりしない場合があります。今回、CAFCはAdvantek Marketing, Inc. v. Shanghai Walk-Long Tools Co.において、デサイン特許に対して地裁においてはProsecution History Estoppelが適用されましたが、CAFCで覆ったので、このケースを詳しく見ていきましょう。

背景

Advantekが U.S. Design Patent No. D715,006 (D’006特許)の出願中、特許庁は (1) a portable animal kennel without a coverと (2) a portable animal kennel with a coverは独立した発明だと判断し、Advantekにどちらかを選ぶよう命じました。その結果、Advantekは(1)を選択。

デザイン特許の成立後、AdvantekはWalk-Longを地裁で訴えます。しかし、地裁は、Prosecution History Estoppelにより、D’006特許には (2) a portable animal kennel with a coverに対する保護が含まれていないため、Walk-Longのanimal kennel with a coverは非侵害だと判決。地裁は、Prosecution History Estoppelの適用を考慮する際に、2014年のCAFC判例Pacific Coast Marine Windshields Ltd. v. Malibu Boats, LLCを引用し、デザイン特許のprosecution history estoppelは、(1) 放棄があったか(whether there was a surrender)、(2) 放棄は特許性のためにおこなわれたものか(whether it was for reasons of patentability)と (3) 侵害が疑われているデザインはその放棄の範囲に含まれるか(whether the accused design is within the scope of the surrender)を考慮する必要があるとしました。

しかし、CAFCは地裁の判決を覆します。CAFCは、Advantek が出願中に一部のクレーム範囲を放棄したかどうかは問題ではなく(つまり、 Prosecution History Estoppelは適切ではない)、Walk-Longの製品はカバーがついている、ついていないに関わらず、D’006特許で守られている構造デザインを要しているかが重要であるとしました。このような判断により、CAFCはD’006特許に対してProsecution History Estoppelは適用されないとし、ケースを地裁に 差し戻し ました。

まとめ

このケースから、デザイン特許に対するProsecution History Estoppelは、出願経緯や侵害品の特徴などで適用の有無が変わってくることがわかりました。デザイン特許を出願する場合は、デザインの特徴的なコアの部分を保護できればいいと思いますが、出願中に保護部分の選択を求められた場合、後のProsecution History Estoppelの影響を考え、選択しなかった部分の保護も分割出願等で、保護をすることをおすすめします。

まとめ作成者:野口剛史

元記事著者:Christina Sperry. Mintz Levin Cohn Ferris Glovsky and Popeo PC (元記事を見る

OLCの米国知財ニュースレター

最新まとめ記事を
毎週メールボックスにお届け

登録すると、週1回、最新まとめ記事の概要とお知らせを受け取ることができます。

コメントする

追加記事

abandoned-low-declining
再審査
野口 剛史

期限切れが迫る中、CBMの申し立てが減少中

Covered Business Method (“CBM”)特許のレビューは、AIAによる特許法の改正があった2012年から、550件以上の行われています。しかし、その数は去年ごろから減少し始め、2018年6月の特許庁による統計データでは、2018年度では、30件ほどしかCBMに対する申し立てがありませんでした。また、ここ数ヶ月では、数件しかCBMの申し立てがありませんでした。CBMは移行期間限定の手続きで、議会が延長しないかぎり、2020年9月で受付を終了します。

Read More »
meeting-discussion
特許出願
野口 剛史

主要特許庁が集まりAIツールについて議論

2018年6月半ば、主要特許庁による会議が行われました。会議の目標は、お互いの特許庁における不必要な重複作業をなくしていき、効率化と質の向上を図っていくことです。今回の会議では、AIが特許システムに大きな影響を与える戦略優先課題の1つとして特定されました。AI技術を特許庁における手続きに適用することで、作業の効率化と質の向上、コストカットが期待されています。

Read More »
LA-night
企業機密
野口 剛史

カリフォルニア州の地裁が企業機密訴訟をリード

アメリカ国内で企業機密に関わる訴訟が一番多いのはthe United States District Court for the Central District of Californiaとのことです。連邦裁判所における案件も全体で30%増えました。連邦裁判所で行われる企業機密訴訟の6%がCalifornia’s Central Districtで起こっているという事実から、今後DTSAの法解釈なのでCalifornia’s Central Districtが重要な裁判所になってくることが予想されます。

Read More »