近年の意匠特許出願の増加に伴い、アメリカの意匠特許に関する考え方が変わってきています。特に、今回100万件というマイルストーンを達成した意匠特許は、過去5年の出願数を見ても大幅な増加傾向にあり、特に、自動車、靴、携帯電話業界では、頻繁に活用されています。そこで今回は改めてアメリカにおける意匠特許の状況を整理し、人気の理由とその高まる価値に注目してみます。
100万件目の意匠特許が発行される
2023年9月26日、米国特許商標庁はテキサス州フォートワースのアグスティナ・ハッカビーに100万件目の意匠特許を付与しました。この発明のタイトルは「ディスペンシング・コーム」です。
意匠特許の特徴
意匠特許は、機能性とは別に、物体の装飾的な外観を保護するものです。意匠特許の存続期間は発行日から15年で、政府による維持費は必要ありません。
意匠特許は、一般的に「特許」と知られている実用特許(utility patent)と比べ、脇役的なものでしたが、近年は注目され、一般的になりつつあります。過去5年間で、意匠特許出願は20%増加し、2022年には50,000件を超えています。これらの出願は、米国特許庁の300人以上の審査官からなる専門グループによって審査されます。意匠特許は通常、実用特許出願に比べて取得費用が安く、審査も迅速に行われます。
発明によっては、構造や機能に関する実用特許と、見た目のデザインに関する意匠特許の両方で保護できるものもあります。どちらのタイプの特許も、新しい発明を開発するための時間とコストの投資を保護したいと望む所有者にとっては貴重な資産です。以前は、意匠出願は保護範囲が狭いと考えられていましたが、意匠出願の増加や侵害訴訟によって、そのような見方は覆されつつあります。例えば、自動車、靴、携帯電話業界は、製品の外観を保護するために意匠権を広く活用しています。
意匠特許の侵害は、通常の観察者テスト(ordinary observer test)によって判断されます。このテストでは、特許デザインと被告製品の視覚的比較が行われます。通常の観察者の目に、被告製品が特許デザインと実質的に類似して見える場合、侵害が成立するというテストです。
意匠特許を取得すれば、競合他社は全く同じものを作ることができず、意匠特許を回避するようなデザインにしなければなりません。意匠特許と意匠特許出願には多くのニュアンスがあり、有益な特許を取得するには工夫が必要ですが、企業の資産ポートフォリオに関する意匠特許の価値は高くなっている傾向にあります。
また、アメリカだけでなく、意匠権やそれに類似した工業デザインの保護は、多くの外国でも受けることができます。