一般的に許可がない他社の商標の利用は侵害訴訟のリスクを生みます。しかし、記述的フェアユースと指名的フェアユースという狭い例外があり、これらの例外に当てはまるような使用をすれば、商標権者の権利を侵害することなく他人の商標を使用することができます。今回はこの2つの例外について説明していきます。
他社の商標の不適切な利用は侵害訴訟のリスクを作る
商標は、消費者がある商品やサービスを他のものと区別できるようにするために出所を識別する役割があります。例えば、スウッシュはナイキの靴であることを示し、一方、3つの様式化されたストライプはアディダスの靴であることを示しています。商標の所有者は、第三者が市場で混乱を引き起こすような形、または本来はないブランドとの関係性を示唆するような形でで商標を使用した場合、自社の商標が侵害されたとして権利行使をする可能性があります。
例外:記述的フェアユースと指名的フェアユース
しかし、商標権者の権利を侵害することなく他人の商標を使用することができる、記述的フェアユースと指名的フェアユースという狭い例外があります。
記述的フェアユースとは?
記述的フェアユース(Descriptive fair use )では、商品やサービスを説明するために記述的に商標を使用することができます。つまり、商品やサービスの出所を示すために商標を使用するのではなく、商品やサービスを説明するために商標を使用することになります。
例えば、あるダイヤモンドの会社がHYQUALITYという商標(「高品質」のユニークな綴り)を使用している場合、商標権者の権利がそのユニークな綴りに限定されるため、競合他社は自社の商品を説明するために「High Quality Diamonds」というような表現を使用することが可能です。
指名的フェアユースとは?
指名的フェアユース(Nominative fair use)は、商標権者の商品やサービスを参照するために、他者の商標を使用することができます。これは、以下の場合に認められます:
(1) 商標を使用しなければ商品やサービスを特定できない、
(2) 商品やサービスを特定するために合理的に必要な範囲のみを使用する(例えば、ロゴの使用を避ける)、
(3) 商標の使用が商標権者によるスポンサーシップや推奨を示唆しない、
などの条件を満たす場合に認められます。
例えば、電話修理会社が広告で「iPhoneを修理します」と言うことができるのは、商標を使用しないと商品が特定できないこと、ユーザーが商品を特定するために必要最低限のことしかしていないこと、使用がアップルとの関係を示唆するものでないこと、などが挙げられます。
知財侵害リスクを管理しながら経済活動をするマインドを
広告、ソーシャルメディア、記事、またはその他の場所(オンラインかどうかに関わらず)での他者の商標の使用を検討する場合、商標権侵害と商標の公正使用の境界線を熟知しておくことは、責任を限定しリスクを軽減するために非常に重要です。
しかし、各ケースでは、関係する特定の事実について独自の分析が必要なため、他者の商標の使用を検討する際は、慎重に進め、弁護士に相談してください。