商標侵害訴訟を先延ばしすると大損する可能性がある

商標権をもっていても、侵害に対する訴訟が遅れると賠償金を取り損なう可能性があります。場合によっては、訴訟には勝っても賠償金が取れないというような状況にもなりかねないので、商標権の権利行使をする際は、訴訟を先延ばしにするリスクも考慮するべきでしょう。

判例:Kars 4 Kids, Inc. v. American Can!, No. 2813

2021年8月10日、米国第3巡回区控訴裁判所は、Kars 4 Kids, Inc. v. American Can!において、KARS 4 KIDSがCARS FOR KIDSというコモンロー商標を侵害しているという判決を下しましたが、地裁が利益の放棄を適切に評価しなかったこと、また、CARS FOR KIDSの所有者であるAmerican Canが侵害の申し立てを行うまでに時間をかけすぎていたという点を考慮し、損害賠償を再評価するように連邦地裁に命じました。

American CanとKars 4 Kids, Inc.は、両団体とも寄付された車の販売を通じて様々な子供向けプログラムに資金を提供する慈善団体です。Kars 4 Kidsは全米で活動していますが、American Canはテキサス州でのみ活動しています。

American Canは1990年代初頭からテキサス州でCARS FOR KIDSという未登録のマークを使用しており、Kars 4 Kidsは1995年にKARS 4 KIDSのマークを社名に使用し始めました。

未登録のマークを使用いるAmerican Canは、2003年にKars 4 Kidsの広告を目にすると、Kars 4 Kidsに使用中止を求める停止命令書を送付しました。しかしその後も、Kars 4 Kidsは全米規模で広告を出し続け、American Canはテキサス州でKars 4 KIDSの広告を何年も見ていないと主張し、2015年になるまで侵害請求を行いませんでした。

まずこの訴訟において、第3巡回区は、連邦登録されていないCARS FOR KIDSをコモンロー商標と認め、その権利はテキサス州にしか及ばないにもかかわらず、商標侵害を認めました。これは、コモンロー上で権利が発生する非登録の商標の強さを物語っています。

しかし、第3巡回区は、差し戻しの際に、American CanがKars 4 Kidsによる商標の使用を最初に発見した時(2003年)からAmerican Canが侵害の申し立てを行った時(2015年)までの間に、Kars 4 Kidsの全国的な広告が、単にテキサス州向けの広告ではなく、テキサス州に届いたかどうかを連邦地裁は詳細に検討しなければならないと忠告しました。裁判所は、これがAmerican Canの遅延が正当化されるか、あるいはAmerican Canの請求が時効となるかどうかを判断するための重要な証拠であると述べています。

最後に、第3巡回区は、連邦地裁が利益の遺贈(disgorgement of profits )の分析において、関連するすべての要素を考慮しなかったと判断しました。具体的には、遺贈にはいくつかの要素が含まれており、例えば、原告が請求を行うのに不合理な遅れがあった場合や、侵害によって失われた純利益の計算などです。連邦地裁は、後者の要素である失われた純利益 net profits lost)のみを考慮し、他の要素は無視していました。従って、連邦地裁は、再審理の際にすべての遺贈要素を考慮しなければならず、その結果、American Canの損害賠償額が低くなる可能性があります。

地裁では一千万ドル($10M)の賠償金請求がありましたが、今回の第3巡回区の判決によって差し戻しされ、地裁で再審議された場合、少なくとも賠償金が低くなる可能性があり、最悪の場合、時効が過ぎていたため賠償金0という判決が出る可能性も考えられます。そのため、停止命令書などで一度権利行使を始めた際には、その時点で訴訟を行わないリスクを考慮するべきでしょう。今回のように12年もの年月がたった後に訴訟を起こすとなると、過去におこなった権利行使活動が賠償金の査定に大きな影響を与える可能性があります。

参考文献:Third Circuit Vacates, Remands $10.6 Million Award Due to Trademark Owner’s Delay in Filing Infringement Claim – Prior Common Law Trademark Rights Upheld Over Federal Trademark Registration

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