アメリカではRequest for Continued Examination (RCE)を使うことで、最終拒絶通知の後でも、Finalの状態を解消し、審査を継続することができます。MPEP 706.07(H) そのため、弁護士によっては多用する人もいますが、RCEは本当に権利化に貢献しているのでしょうか?今回はデータから分析してみたいと思います。
戦略別の権利化率
今回紹介する記事を掲載しているサイトは、 BigPatentData examiner analyticsという分析ツールサービスも提供しています。その中で、strategy-specific allowance ratesというものがあり、特許の権利化率(Allowance rate)をRCEあり・なし、Appealあり・なし、Interviewあり・なし、など戦略別に示して、かつ、サンプルデータの数も示してくれる便利な指標を審査官ごとに表示してくれます。
元記事の最初の図では、RCEなしでは7%しか許可せず、RCEありだと66%も許可する審査官の例を挙げています。
審査官別RCEによる権利化率の違い
元記事の2番目の図は、審査官別のRCEによる権利化の知財を示した分布図です。そこでは審査官の平均では、RCEがあった方が5%権利化率が高いという数字をしめしていますが、そこがポイントではなく、審査官の個人差が大きく、個別の対応が必要なことを訴えています。
RCEをやった方がいい審査官とそうでない審査官
ここで強調されている個人差ですが、データサンプルとして2つの極端な例が紹介されています。例えば、出願の80%を許可するある審査官のRCE allowance rate differentialは-42です。つまり、RCEをおこなわないで権利化になった出願は84%で、逆にRCEをおこなって権利化された出願はわずか42%ということになります。
一方で、出願の79%を許可するまた別の審査官のRCE allowance rate differentialは+44です。つまり、RCEをおこなわないで権利化になった出願はわずか51%ですが、逆にRCEをおこなって権利化された出願は95%にも上ります。
前者の審査官に対するRCEは統計的に効率的な戦略とは言えませんが、後者の審査官に対するRCEはとても有効な可能性が高いです。
まとめ
RCEには別途特許庁へ支払う費用がかかり、さらに、審査が継続されるため、弁護士費用もかかります。なので、BigPatentData examiner analyticsのような有料ツールを使って、担当審査官のRCE権利化率を把握することで、より戦略的な特許出願ができるようになります。
まとめ作成者:野口剛史
元記事著者:Chad Gilles. BigPatentData Inc.(元記事を見る)