アメリカで商標を持っているなら、権利行使の手段として税関を活用することを検討してみてはどうでしょうか?税関での偽造品の取締は強力で、ちかも、権利行使するための費用が経済的というとてもコスパに優れたツールとして活用できる可能性があります。
連邦商標登録のメリットとして見落とされがちなのが、米国税関・国境警備局(以下、CBP)の主登録簿(Principal Register )に登録を記録できることです。例えば、2020年にCBPが押収した偽造品の数は26,503個で、金額にして13億ドル以上に達しています。また、知的財産権犯罪に関連して203人を逮捕し、125件の起訴を行い、98件の有罪判決が下りました。しかし、CBPの商標登録の記録料は、商品のクラスごとにわずか190ドルです。
米国には約328の入港地があり、CBPは毎年、これらの入港地で何千万もの貨物を処理しています。これらの入港貨物の一部はCBPによって検査され、特にCBPに記録されている商標登録と比較されます。CBPは、記録された登録商標のマークを付した、偽造または無許可と思われる商品を発見すると、その商品を留置し、記録された商標登録の所有者に連絡します。所有者は、CBPが偽造品を特定するのに役立つ情報を提供することによってCBPを支援することができます。これには、偽造品には存在しない正規品の特徴についてCBPを教育することや、偽造品の特定の出所を特定することが含まれます。場合によっては、商標権者は、CBP 及び他の米国法執行機関が偽造品業者に対する訴追を構築することを支援することができます。
通関記録は、他の多くの国でも利用可能です。記録の有無、料金、要件は国によって異なりますが、中国、シンガポール、タイなどの一部の国では、輸出入貨物の両方を検査しています。これは、例えば、中国の税関検査では、出国前に偽造品を発見できる可能性があることを意味しています。
外国の税関データベースへの登録商標の記録には、時にかなりの時間がかかります。例えば、ロシアの税関でマークを記録するには1年かかることもあります。このような理由から、登録を受けた後、速やかに外国の税関記録プログラムを開始することが重要です。
さらに、米国政府は海外に連邦検察官を駐在させており、海外での米国ビジネスの利益を守るために、現地の税関職員や検察官と連絡を取るなど、現地の政府関係者に助言や支援を行っています。
自社の事業にとって重要な特定の市場がある場合、または、自社の商品の偽造品が発生する特定の国がある場合には、税関に商標登録を記録することを検討してみてはどうでしょうか?
参考文献:Customs Recordation: A Powerful and Inexpensive Tool for Enforcing Trademark (and Copyright) Rights