前文の限定的な用語は前文全体を限定的なものにするのか?

今回の判例から前文の一部が限定的であった場合、残りの前文もすべて限定的になると判断される可能性があるので、アメリカのクレームを書く場合、前文(Preamble)は意図的に限定を狙うか、そうでない場合は最小限の文言で済ませていた方がいいでしょう。

要約:前文の要素が限定的である場合、前文の残りの部分の不可分な条項も限定的になる。苦難のバランス分析の下では、侵害しない代替品がない製品に終局的差止命令は適用されるべきではない。

判例: BIO-RAD LABORATORIES, INC. v. 10X GENOMICS INC.

Bio-Rad社は、医療診断やスクリーニングのための微細な液滴を形成するシステムに関する3つの特許を侵害しているとして10X社を提訴した。陪審員は10Xに故意侵害の責任があると判断し、連邦地裁は10Xの非侵害のJMOL(Judgement as a matter of law)申し立てを却下し、Bio-Radの終局的差し止めの申し立てを認めました。

控訴審で10Xは、3件の特許のうち2件について、連邦地裁は前文の制限を認めなかったことにより、独立クレームを誤って解釈したと主張。連邦地裁は、いくつかの前文の用語がクレームの本文でそれらの用語を使用するための先行的な根拠を提供していると認定したが、前文全体を制限に変えるものではなかったと判断。しかし、連邦巡回控訴裁はこれに反対。連邦巡回控訴裁は、前文はきれいに分割することはできず、前文は全体として一緒に読まなければならないと判断。連邦巡回控訴裁判所は、前文の特定の条項には制限的な効果を与えるが、その制限的な部分を取り囲む他の条項には制限的な効果を与えなかったことに誤りがあったと判断しました。連邦巡回控訴裁は、請求項の範囲を制限するものとして前文を全体として考慮した新たな侵害判定を求めて地裁に再送。

10Xは、終局的差止命令の範囲についても争いました。連邦地裁は、差し止められたシステムの一部ではあるが、すべてではないが、侵害のない代替システムを一般的に販売することができるため、10Xの苦難(Hardship)は緩和されていると判断。連邦巡回控訴裁は、10Xの苦難を製品ごとに評価し、5つの製品ラインのうち2つについては、それらの製品には非侵害の代替品がなかったため、差止命令を取り消した。

解説

まずは前文について解説します。

問題となったクレーム文言がこちら。

A method for conducting a reaction in plugs in a microfluidic system, comprising the steps of:

providing the microfluidic system comprising at least two channels having at least one junction; …

forming at least one plug of the aqueous fluid containing the at least one biological molecule and the at least one reagent by partitioning the aqueous fluid with the flowing immiscible carrier fluid at the junction of the at least two channels, the plug being substantially surrounded by the immiscible carrier fluid flowing through the channel, wherein the at least one plug comprises at least one biological molecule and the at least one reagent for conducting the reaction with the at least one biological molecule; and…

地裁は、問題となっている請求項の前文を「『マイクロ流体システム』(microfluidic system)と『反応』(reaction)という用語の先行的な根拠を提供する程度にのみ」で限定的であると解釈しました。そしてこの根拠となるTomTom判例を依拠して、地裁は、クレームの前文が「発明のための意図された使用を述べており、発明を記述するクレームの制限が暗唱されているクレームの本文が続く」と結論づけ、前文全体を制限に変えるものではなかったとしました。

しかし、CAFCは地裁の結論を覆し、制限条項された前文に書かれている用語は、前文の残りの部分と切り離して読むことはできないとし、問題となっている前文で先例の根拠として依拠されている文言は、前文の残りの部分と絡み合っているとされました。

そしてCAFCは、審査官は出願中に特許の前文とタイトルの両方を修正し、反応が『マイクロ流体システム内のプラグで行われる』ことを明記したことを理由に、前文すべてが限定的であると判断しました。

続いては、差止命令です。アメリカの特許侵害における差し止め命令は以下の4つの要素を考慮して決断されます。

whether to award permanent injunctive relief to a prevailing plaintiff requires the plaintiff to demonstrate:

(1) that it has suffered an irreparable injury;

(2) that remedies available at law are inadequate to compensate for that injury;

(3) that considering the balance of hardships between the plaintiff and defendant, a remedy in equity is warranted; and

(4) that the public interest would not be disserved by a permanent injunction.  

eBay Inc. v. MercExchange, L.L.C., 547 U.S. 388, 391, 126 S. Ct. 1837, 1839 (2006).  

eBay factors とも言われますが、今回はその3番目のHardshipが考慮され、5つの製品ラインのうち2つについては、それらの製品には非侵害の代替品がなかったため、差止命令を取り消されました。

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まとめ作成者:野口剛史

元記事著者:Mark Kachner, Marissa M. Rosenbaum and Paul Stewart. Knobbe Martens(元記事を見る

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